星新一(写真左)は大正十五年(一九二六年)生まれ。父は星製薬創業者・星一。本名は「親切第一」から親一。母方の大伯父には森鴎外がおり、自身も東京大学農学部から大学院に進んだ。科学者にして大企業の経営者というエリートの境遇が約束されていたかに見えたが、昭和二十六年(一九五一年)、父の急逝により星製薬を引き継いだときにはすでに会社は傾いており、破綻処理から経営を人手に渡すまでに、辛酸をなめた。
厳しい現実に嫌気がさしていた頃、レイ・ブラッドベリの『火星年代記』に感銘し、空想に遊ぶSFに傾倒する。
やがて「ショートショートの神様」として満天下の人気を博する。紳士的な人柄の一方、奇行とすら称せられるほど過激なユーモア精神を発揮し、つねに作家仲間の中心にいたが、どこか人間を信じないところもあったようだ。
自らの作品の映像化をほとんど許さず、あるときは「自分の作品がいじられるのはまっ平ごめんだ」とはっきり口にしたこともあった。実際、星の作品はすべて具体的な地名、人名が排され、時代も国も特定できない。もともと映像化を拒絶するような構成であった。
そんな星が信頼していたイラストレーターが、真鍋博(昭和七年生まれ)。初期の星作品からずっと、挿絵コンビを組み、「人物描写がなく年齢不詳」の人物をもとに、星の世界観を絵にしてきた。「その才能に感嘆し、まったく心から感謝する」と、星はオール讀物・昭和五十二年十月号に記している。心を許し合った仲が星と真鍋だった。写真はこのときに撮影されたもの。のち、星作品の挿絵をあつめた「真鍋博のプラネタリウム」が出版されている。
星は平成九年(一九九七年)年、七十一歳で没。真鍋博は平成十二年没。
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