忙しくても1分で名著に出会える『1分書評』をお届けします。 今日は門脇舞以さん。
家裁調査官の仕事は、問題を抱えた当事者の背景を調査し、持っている専門知識を生かして調停委員や裁判官をサポートしながら、紛争を解決に導くことであるという。望月大地は、福森家庭裁判所で実務修習を受けている家裁調査官補である。法学部出身、22歳。生来は人と深く関わることを苦手としていたが、ある家裁調査官との出会いを機にささやかな希望を抱き、この仕事に就くことを選んだ。
家裁調査官はひとりで何件もの案件を抱えている。窃盗犯の少女、ストーカー少年、離婚調停……ありふれた問題であるかのように日々舞い込んでくる様々な調査書類。「百聞は一見に如かず」と、中でも調査官補に丁度良いとされた事案が大地へと託されるが、一歩踏み込んでみれば、そのどれもが、ひとりとして同じでない人間同士のいびつな関わりから生じた無二の“一大事”であることを痛感するばかりであった。誠実に、饒舌に、己の正しさを主張する者。抑圧され、緊張し、助けを求める言葉すら見失っている者。彼が当初見込んでいた通りの結果を得られることなど一度もなかった。「自分はこの仕事に向いているのか」と自問しながらも、問題の因果を見極めるべく大地は奔走し続け――。
『あしたの君へ』……このタイトルこそ、ありふれた言葉のようでいて、その実、なんと救いの心に満ちた味わい深きものであったことか。物語の行く末を案じる我々にとって、明るい未来を予期するに十分な結びのメッセージであるとも受け取れる。だからこそ、多くの読者が、続くシリーズ化への期待を大いに膨らませてしまうのだ。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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