忙しくても1分で名著に出会える『1分書評』をお届けします。 今日は門脇舞以さん。
結城勇樹、20代後半、事務所預かり声優、代表作、なし。国民的人気マンガ「センターライン」のオーディションを受けた夜、いつものように喫茶店でアルバイトをしていた勇樹の前に “二十四時間声優”大島啓吾が現れる。彼は名刺を差し出し、勇樹と一緒に仕事がしたいと告げる。
受けた役には落ちてしまったものの、勇樹はヒロインの飼い犬・サブ役に決定した。主要キャストには大島啓吾。しかし初レギュラー現場での「リテイクの嵐」に悩み苦しむ勇樹には、彼に件の真意を伺う余裕などなく……。
著者は、以前自著がアニメ化された際の経験から、“声のお仕事”の世界を切り取って活写する作品を手がけたいと思ったのだという。当時出会った声優たちとの対話など、多くの助けを得て作品が形を成したと巻末にて謝辞を述べている。確かに本作を読んでいて、現場あるある・声優あるあるとして共感できる部分が大変多くあった。同時に、共感できない部分もいくつかあった。勿論、誰かが共感できないからといって間違っているというわけではなく、著者がそれだけ多種多様な声優の言葉を丁寧に聞き取り、「声優さん、面白い!」と感じた想いの素すべてに物語を活かす役割を与えていった所以なのだろう。新たな作品を生み出す原動力となり糧となる程に、アニメ『銀河へキックオフ!!』の現場を、皆が愛していたのだ。この物語が当時の視聴者に届くことこそが何よりの大団円に思えて仕方がない。
大島啓吾との共演を機に、勇樹は自身の過去を想起する。チームを組んで笑いあった、原点の記憶。幼い心は純粋で正直で、どんな時も夢を見逃さず、輝く方向に進め進めと歩き出す。……私も、このままこうして歩いていくんだろうと思った。この世界を。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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