担当編集者より

構想段階からすると二十年、「文學界」での連載期間は足かけ十年に及んだ著者初の大河歴史小説、全四巻毎月連続刊行の一冊目となります。
主人公は、幕末の越中富山藩に生まれた川上弥一。十六歳にして薬種問屋に奉公に入った弥一は、修業期間をへて薩摩藩担当の売薬行商人となります。
薩摩藩の役人とも親しくなっていく中で弥一は、薩摩藩と富山の薬売りが、ある「密約」を結んでいることをじょじょに知っていきます。
いっぽう日本全体に目を転じれば、ペリーの黒船が来航し、開国派と攘夷派が激しく対立、不穏な動きが強まっていました。
第二の開国（グローバリゼーションや通貨変動）にさらされる現代日本人にとって、よき「羅針盤」となることでしょう。
人間の命のつらなりを描いてきた宮本文学の集大成でもあります。
初版限定特典として、全四巻それぞれに違った著者直筆の「ことば」が入った「讀む藥」がもれなくついてきます。