書評

この国難を如何に乗り越えるか

文: 藤井 聡 (京都大学教授)

『列島強靭化論――日本復活5カ年計画』 (藤井聡 著)

 その策定にあたって、筆者がその中心に据えたのが、

「強靭さ」(レジリエンス)

 という考え方でした。これは要するに、「どんな衝撃があっても乗り越えられる性質」で、例えば「柳の木」の様な「しなやかさ」を意味します。

 今回の東日本大震災から立ち直るために必要なのは、大きな衝撃の後もまた元に回復するしなやかな回復力です。そして、数々の巨大地震に対して必要とされているのも、致命傷を受けず、再び「柳の木」の様に元通りになることができる、そんなしなやかな強靭さです。そんな強靭さを手に入れる「列島強靭化」が可能となるなら、我が国は永続的な繁栄を続け、日本国民は長らく安寧の内に暮らしていけるに違いない――これが、筆者が構想したヴィジョンです。

 国会の公聴会では、以上の「ヴィジョン」とその「道のり」を公述しましたが、それだけで日本がその方向に向けて歩み出すことになるとは到底思えません。なぜなら、様々な職場や地域で一人一人の日本人が紡(つむ)ぎ出す「実践」の集積によってはじめて、日本という国のかたちが変わっていくこととなるからです。

 こうした思いで、一人でも多くの日本人にそのヴィジョンを問うことを目途としてとりまとめたのが、本書『列島強靭化論』です。

 本書ではまず、今回の震災で激甚なる被害を受けた東日本を、さらにはその地に息づく「ふるさと」をどのように再生するのか、そして、この震災によって深手を負った深刻なデフレ不況下にある「日本経済」をどうやって復活させるのかを論じました。さらには、そのための財源をどう確保するのかについても、財政と経済、金融、税制を見据えながら併せて論じました。

 それと同時に、今私たちが直面している数々の自然災害の危機がどれほど「巨大な被害」をもたらすのか、そしてどれほど「確からしい確率で起こるものなのか」を客観的に論じました。その上でそれらにどのように立ち向かうべきなのかを、一つ一つの街や村、あるいは、個々の会社のビジネスのあり方から、首都機能分散論を含めた「国土計画」のあり方に至るまで、一つずつ論じました。こうした諸事業を、短期集中的に推進してはじめて、我が国の「強靭化」が可能となるのです。

 ――本書『列島強靭化論』は、この様に、経済や財政、国土計画といった諸問題を総合的に視野に収めながら「復興」「防災」を一挙に達成するためのヴィジョンと道のりをとりまとめたものです。一人でも多くの皆さんに本書にお目通し頂き、一人でも多くの方に、日本の生き残りをかけた数々の取り組みにご参画、ご支援いただくことを、そして、それを通して、一日も早い東日本の復活と、如何なる国難をも乗り越える「強靭さ」を我が国が確かに手に入れることを、心から祈念したいと思います。

(編集部註:なお、筆者は本書の印税を放棄し、小社を通じて震災復興のために役立てることで合意したことを付記致します)

列島強靭化論
藤井 聡・著

定価:798円(税込) 発売日:2011年05月20日

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