- 2012.02.24
- 書評
あなたの貯金、年金は大丈夫か
文:川北 隆雄 (東京新聞編集委員)
『日本国はいくら借金できるのか? 国債破綻ドミノ』 (川北隆雄 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
しかも、日本はギリシャなど欧州諸国の大騒ぎの陰に隠れていますが、実はギリシャ以上に財政危機が深刻なのです。国債など政府の借金の対国内総生産(GDP)比は、ギリシャよりも、どの先進国よりも高いのです。
それでも、日本国債が市場で買われて、10年物長期国債の市場利回りが低位安定している理由はいくつかあります。日本は経常黒字国で、債権大国であり、個人金融資産が巨額にあるから……などです。しかし、これらの要因も次第に怪しくなってきています。どこかの時点で日本もギリシャやその他の欧州諸国のように国債が売られ、「債務危機」が生じるかもしれません。
財務省は表向き、「先進国で国債のデフォルト(債務不履行)が起きることはない」と主張しています。しかし、本当はとても心配しているのです。日本国債が順調に市場で消化されている(ように見える)のは、財務省理財局の担当者と銀行、生保、証券などの担当者が定期的に「意見交換」をしているからなのです。財務省側は業者側の需要などを聴きながら、発行計画を進めるわけですが、もともと対等の関係ではないので、業者側は「ちゃんと買ってくれるんでしょうね」という無言の圧力を感じるはずです。
では、日本の国債は、財政はいつ破綻するのでしょうか。それは誰にも予言できませんが、「7、8年後」という説が有力になりつつあります。そのころには、地方も含めた政府の借金総額が、個人金融資産を上回る可能性があるということから導き出されています。ただ、「だから増税しなければならない」というのは、短絡的な発想です。経済成長で制度的な増税なしに税収を増やすとか、官僚機構の既得権益に切り込んで財源を生み出すとか、もっと考えるべきです。
もし、実際に財政破綻すれば、国民生活は大変なことになります。円相場は大幅安となり、物価は猛烈に上がり、その一方で公的年金はカットされ、官民ともに大幅な首切り合理化が行われ、街には失業者があふれるでしょう。企業や個人資金の海外逃避を防ぐために預金封鎖が実施されて、思うように銀行などからお金を下ろせなくなり、金持ちも困窮するでしょう。考えるだけでも恐ろしいことです。
ただ、そんな事態になっても、歴代首相や蔵相、財務相ら政治家、あるいは財務官僚をはじめとする官僚機構が責任を取ってくれるわけではありません。国民1人1人が自ら生活防衛するしかないのです。
私は4半世紀にわたって旧大蔵=財務省を取材し、日本財政をウォッチしてきました。その知識を本書で、世の人に伝えたいと思っています。
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