- 2012.02.24
- 書評
あなたの貯金、年金は大丈夫か
文:川北 隆雄 (東京新聞編集委員)
『日本国はいくら借金できるのか? 国債破綻ドミノ』 (川北隆雄 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
米国の人気映画シリーズ「ダイ・ハード」の中で、私にとって最も面白かったのは、やはり第1作(1988年)です。それは、ロサンゼルスの日本商社の高層ビルを舞台にしたという密室性と、その比較的狭い空間の中で主人公が縦横に暴れ回るアクションという二律背反的な要素を絶妙に組み合わせたことが大きかったようです。
最近、DVDで見直してみて、興味深かったことがもう1つあります。それは、ラスト近くで米国債がビルの上階から大量に雪のように舞い散るシーンです。バブル経済全盛の当時、日本の政府、企業が米国債を買いまくり、日本が最大の米国債保有国だったので、日系企業のビルに巨額の米国債が保管されていたという設定がまず、面白かったと思います。それと、当時は国債が、米国でも日本でも紙に印刷された券面だったのです。国債や上場企業の株式などがペーパーレス化された現在、紙の国債というのは逆に新鮮でした。
私は国債というものを見たことがありません。日本の国債は、以前は銀行や生命保険会社、証券会社など法人向けで個人は買えなかったからです。仕事がら、旧大蔵省提供の国債の見本写真は見たことがありますが、見本そのものも見たことはありません。
現在は、個人向け国債が売り出されているので、個人でも買うことができますが、目で見ることはできません。国債は今、コンピューター上に記録されて、管理、処理される存在なのです。
その目に見えない国債を抜きに、多くの国家は予算を組むことはできません。さまざまな理由で歳入の柱であるべき税収が不足しているため、借金、つまり国債で歳入不足を補わなければならないからです。
現在、国債が世界的に問題になっています。南欧のギリシャが国債など巨額の借金を抱えて国家破産の危機にしているからです。ギリシャは欧州連合(EU)の統一通貨、ユーロに加盟しているため、これはギリシャ1国の問題にとどまりません。ユーロ圏からEU全体、さらには米国や日本にまで飛び火する可能性があります。
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