フランス文学者の桑原武夫は、明治三十七年(一九〇四年)生まれ。父は東洋史が専門の京都帝国大学教授だった。京都一中から三高を経て、京都帝国大学文学部を卒業。
スタンダールの『赤と黒』やアランの『芸術論集』など、当時まだ日本人にはなじみが薄かった作品を翻訳するなど、フランスの文学や評論を幅広く日本に紹介した。吉川幸次郎、貝塚茂樹らとともに、京都学派の中心として、文化的な活動を精力的に行った。
戦後まもない昭和二十一年(一九四六年)、「世界」に発表した「第二芸術――現代俳句について」は、俳句表現の限界を説き、一流ではないという意味で第二芸術と表現した。俳人からの激しい反論を呼ぶなど、大きな議論が巻き起こった。
「ある左翼の評論家にいわせれば、桑原の第二芸術論はまことにつまらん、その証拠に俳句は消えてなくならんじゃないか。こっちがそれに答えて、マルクス主義というのもつまらんものだ、その証拠に、いくら運動をしても、日本でいっこうに革命が起っていないじゃないかといってしまう。
ユーモアのつもりなんだけど、いわれたほうで本気になって怒り出す人があるから、困るんです(笑)」(「文藝春秋」昭和四十三年十一月号「松本清張対談」より)
写真はこのとき撮影。
昭和二十三年、京都大学人文科学研究所教授となり、三部作『ルソー研究』『フランス百科全書の研究』『フランス革命の研究』を、共同研究という画期的な方法で完成させた。この共同研究を通じて、梅棹忠夫、梅原猛、上山春平、鶴見俊輔らを育てた。また、岩波新書『文学入門』や編者となった中公新書『日本の名著』は新書のベストセラーになった。
三高以来、同期である今西錦司とともに登山家としても知られ、昭和三十三年、京都大学学士山岳会の隊長として、パキスタンのチョゴリザへの登頂を果たし、黎明期の日本登山史に大きな足跡を残した。昭和六十二年、文化勲章受章。昭和六十三年没。
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