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酔うと気前がよかった尾崎士郎

酔うと気前がよかった尾崎士郎

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 酒豪にして相撲好き、尾崎士郎は明治三十一年(一八九八年)生まれ。荒畑寒村や大杉栄らの影響を受け、早稲田大学政治経済科に学ぶが、学長問題と学制改革に端を発した学内騒動のリーダー格と目されて中退する。社会主義者堺利彦が平民社を解散した後、創設した売文社で働くようになる。幸徳秋水らが明治天皇暗殺を企てたとされる大逆事件を研究する一方、大正十年(一九二一年)、「獄中より」で時事新報の懸賞小説に入選、小説家として活動するようになる。このとき一等になったのが、藤村千代(のちの宇野千代)だった。

 大正十二年、宇野千代と結婚、大森の文士村で新婚生活を始めるが、まもなく二人の生活は破綻する。原因の一つが、梶井基次郎が宇野千代に言い寄ったことにあるとされている。

 昭和八年(一九三三年)から都新聞に「人生劇場」を連載し、空前のヒット作となる。戦時中も人気が高く、作品を発表し続けたが、愛国的な文学者の団体、文学報国会の理事を務めたため、戦後、公職追放となった。この困窮の時代を、「人生劇場」の印税で糊口をしのぐことができたという。伊豆の伊東に疎開し、筆を休めることなく、「石田三成」「真田幸村」など歴史小説をてがけた。酒に酔うと気前がよくなり、人に物をあげるのが癖だった。尾崎邸の庭にある石灯籠を褒めた文芸評論家の高橋義孝に、「ウ、ウー、あの、帰りにトラックを呼んであれをお持ち帰りください」と伝えたという。写真は昭和三十六年撮影。昭和三十九年、直腸がんでなくなる。

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