
『汚れた手をそこで拭かない』『夜の道標』など、近年のミステリ・ランキングの常連である芦沢央さん。芦沢さんの最新作『嘘と隣人』(2025年4月刊)は発売から即重版を重ね、第173回直木三十五賞の候補作となり、さらに話題を呼んでいます。

本作は、刑事の仕事を定年退職した平良正太郎が事件に巻き込まれ、解決していく連作短編です。重版を記念して5月に行った特製缶バッジプレゼント・キャンペーンには、たくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。このキャンペーンにお寄せいただいた、読者の皆さんの胸に一番刺さった作品名について、ランキングと感想を発表します!
1位「最善」
抱っこ紐のバックルが外され、乳児がホーム際に落ちるという悪質な事件が登戸駅で起きた。通勤の混雑と、同じ車両で痴漢騒ぎが起きたことが重なり、捜査は難航する。正太郎の妻の澄子は、英会話教室で知り合った沙知という女性の夫が痴漢事件の容疑者として逮捕されたのだと明かす。沙知は元刑事の平良に力になってほしいと依頼するが……。
「どの立場になったとしても、いたたまれず苦しい」(Kさん)、「一見不可解に思える供述・行動の裏には自分可愛さによる嘘が隠れており、真相に辿り着いたときは、驚きで顔を歪めました」(Wさん)
2位「アイランドキッチン」
定年退職し、妻とのんびり老後を過ごす家を買うことを考えた平良。不動産屋で薦められた物件は、11年前に捜査のために何度も足を運んだマンションだった。マンションの外階段から転落して亡くなったのは8階に住む豊原実来。仕事のトラブルが原因で心療内科に通っていた。同じマンションの住民に聞き込みを始める正太郎だったが、最初に訪ねた部屋の住民は、この部屋を売ってアイランドキッチンのある戸建てを妻にサプライズでプレゼントしたという。
「自殺か他殺か、犯人はこの人か、いやこの人か、といくつもの可能性が生まれていき、最後そうきたか! という展開も、伏線の張り方もさすが」(Tさん)、「犯行の動機が斬新だった」(Hさん)
「アイランドキッチン」冒頭立ち読みはこちら
3位「嘘と隣人」
平良は同じマンションの住民から知り合いの相談に乗ってほしいと声を掛けられる。ベビーマッサージの先生をしている知り合いが、SNS上で自分の16歳の娘を脅すようなエアリプを受けているのだという。脅しをしているアンチの正体を調べてほしいと頼まれた平良は、警察時代の同僚・吉羅が開いている探偵事務所を訪ねる。アンチの意外な正体は突き止められるが、吉羅はある妊婦に関する投稿が気になるという……。
「どんでんがえしの連続で、これが真相かと思ったらさらに別の角度からも……という一筋縄ではいかない結末に、快感というより恐怖すら覚えました」(Nさん)、「ある所で視点がグルっと切り替わるのが鮮やかで、それまで見えていなかったものが突然目の前に現れる感覚がすごいと、毎回唸ってしまいます」(Kさん)
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『妖の絆』誉田哲也・著
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