- 2011.03.20
- 書評
もはや「医療先進国」ではない日本
文:中田 敏博 (医師・ベンチャーキャピタリスト)
『医療鎖国――なぜ日本ではがん新薬が使えないのか』 (中田敏博 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
みなさん、日本の医療に対してどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
きれいな病院にいき、最新の機器で検査を受けると、さすが日本の医療技術は最先端で素晴らしいという印象を受ける方も多いでしょう。
また、政府はメディカルツーリズムを推進しようとしています。それは世界最先端の医療技術を提供することで、主にアジアの富裕層を日本に呼び込もうとする動きです。
日本は技術立国であるというイメージも定着しています。当然医療の分野でも然(しか)りと考える人は多いと思います。
しかし、私はこの十年、海外から日本の医療を見て、衝撃的な事実につき当たりました。残念ながら、医療技術先進国という日本のイメージは幻想だったのです。
それどころか、日本は世界の先端医療に対して「鎖国」をしていることに気付きました。海外では当たり前に使われている医療技術を日本では非常に遅れてでなければ使えない、あるいはそもそも全く使えないというのが現状なのです。
更に言えば、その「鎖国」の度合いは、先進国どころか、発展途上国並なのです。
例えば、世界で認可されている先端医薬品に関して日本で認可されている品目数や、認可までに要する時間を統計でみてみると、日本は他の新興アジア諸国よりも劣っていることが分かるのです。
ところで、私の自己紹介をさせていただきます。私はまず日本で医師として社会人生活をはじめました。その後、単身日本を飛び出し、ここ十年は米国サンフランシスコ南部のシリコンバレーで先端医療分野に特化したベンチャーキャピタリストとして活動しています。
あまり、聞きなれない名前の職業かもしれませんが、それは、世界中から有望な先端医療技術を発掘し、たった数人で起業し、リスクを取って投資を行い、共に経営者として成功に導いていく仕事です。
その中には、幸運にも、世界中の多くの人の命を救うことのできる医薬品や医療機器の開発に成功した企業もありました。
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