――抗がん剤治療で「生きるために治療するのではなく、治療するために生きているようだった」という当馬の言葉が闘病の苦悩を伝えますが、自らが、がんであることを公表したことで、他の患者たちを勇気づけることになります。
石田 がんの資料にはもちろん様々目を通しましたし、インターネットの闘病記が参考になりました。当馬は俳優ですから、肺を大きく切除してしまうような手術をしては、容貌も変わってしまいますし、仕事に戻るのは難しい。いろいろ調べていくと抗がん剤を使うしかない特殊な肺がんにいきつきました。現実の治療では、がん細胞が大きくならなければ抗がん剤が効いていると評価されて、薬を替えながら延々と投薬治療が続くようです。副作用には対症療法の薬ができていますから、以前よりは楽になっているというのが現場の考えのようです。その辺はわりとリアルに書いてあるつもりです。
――当馬のとりまき、マネージャーの木内あかね、新人俳優の城戸勇馬たちは、仕事と闘病に立ち向かう当馬の姿を見て自分たちも成長していきます。また、当馬は皮肉なことに病気になって生きる意味を見つけ、生きがいを感じますね。
石田 生死をあまり深刻に扱わないところがいいんだと思います。重大事に考えることもありますが、人は生きているから死ぬんだくらいにさらっと乗り越えている人もたくさんいるんですね。僕自身の最期のときもそうだろうと思っていますよ。当馬も「がん」になったのはもうしょうがないから何か1ついい仕事をして死にたいな、と。日本人に通じる、生死を凌駕する明るさみたいなものがあるのではないでしょうか。
――幸福は「平凡なものだ」と当馬は感じますね。
石田 天気のいい日にぶらっと自由に外を散歩できることを幸福って言うんじゃないでしょうか。地位や富を得ても、気持ちよく感じるのはそういう日常の一瞬のことです。それは世界中一緒だと思います。家族で集まってご飯を食べたり、カフェで友人とお茶をしたり。当馬の1年間の生き方から普通の「幸せ」を考えていただけるといいですね。
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