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一番新しい時代の風を小説に<br />大人気シリーズ再始動

一番新しい時代の風を小説に
大人気シリーズ再始動

文:「オール讀物」編集部

『憎悪のパレード 池袋ウエストゲートパークXI』 (石田衣良 著)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 これまでは同世代が関わる事件が多かったのですが、マコトたちが年を重ねたことで、目線が同じ高さではなくなる。つまり、ただがむしゃらに解決するだけでは済まない、大人の立場や責任のようなものが発生するという変化が生まれています。

 マコトだって、決して経済的にいい時期に青春時代を過ごした訳ではありません。ただ、リーマンショック、東日本大震災を経て、それ以上に厳しい環境で育ってきた世代に対して彼が何を感じ、どのように接していくのかが読みどころの1つです。

 かといって、物語の疾走感が失われたわけではありません。再開インタビューで〈IWGPのもっとも大事な機能は、いまの一番新しい時代の風を小説としてレポートすること〉と述べているように、3篇目の「西池袋ノマドトラップ」ではノマドワーカーと、“ビットゴールド”と呼ばれるデジタル通貨(本筋とは関係ありませんが、この話の中で出てくる経営者が書いた自己啓発本のタイトルにも要注目!)、表題作「憎悪のパレード」ではヘイトスピーチが描かれています。

 テーマだけを見ると、最近話題になったニュースが多いなと思われるかもしれませんが、実は雑誌連載中は事件化しておらず、後に大きな話題になったものがほとんどです。

 つまり、石田さんの時代の先を見透す目、もっといえば作者を通して物語内でマコトが本質を見抜こうとする姿勢はこれまでと変わりません。むしろ登場人物たちが大人になったことで、より深みのある多様な視点や考え方を獲得したのです。

 読み進めると、時代のトレンドを取り上げながら、そこに親子の愛情といった、人が持つ普遍的な感情が組み合わさることで問題が解決していくことに気付くでしょう。世の中は変わりながらも、変わらない大切なものは何なのかをこのシリーズは教えてくれます。

 変わるものと、変わらないもの。この2つが絶妙なバランスを保つことによってIWGPはさらなる進化を遂げました。第2シーズンはここからがスタート、ぜひ楽しんでください。

憎悪のパレード
石田衣良・著

定価:1,500円+税 発売日:2014年07月14日

詳しい内容はこちら   特設サイトはこちら

 

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