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有島生馬と里見弴、仲良き兄弟の姿

有島生馬と里見弴、仲良き兄弟の姿

文・写真:「文藝春秋」写真資料部


ジャンル : #ノンフィクション

 兄・有島生馬(写真右)と弟・里見弴には、もうひとりの兄弟、武郎(長兄)がいたが、武郎は、大正十二年(一九二三年)、心中事件により四十六歳で亡くなっている。

 生馬は明治十五年(一八八二年)生まれ。本名壬生馬(みぶま)。東京外国語学校卒業後、藤島武二に師事して油絵を始める。明治三十八年、イタリア、フランスで美術を学んだ。帰国後、兄武郎、武者小路実篤らとともに、「白樺」の創刊に携わる。セザンヌら印象派の画家を日本に初めて大々的に紹介して、画壇に強い影響を与えた。

 二科会の創立に参加、さらに一水会を創立するなど、日本の洋画界の重鎮の地位を占めた。セザンヌの影響を受けた画風で、雨東生、十月亭の雅号を名乗った。また小説「ボーヂュの森」などを発表、作家としても評価された。昭和四十九年(一九七四年)没。

 末弟の里見弴は、明治二十一年生まれ。生まれる直前に母の弟、山内英郎が亡くなったため、山内家の養子となる。本名山内英夫。東京帝国大学文学部中退。かれも「白樺」の同人に参加した。大正四年、「晩(おそ)い初恋」で文壇デビュー。思想やイデオロギーにとらわれない作風で、代表作に、「善心悪心」「今年竹」「多情仏心」や武郎の心中事件を題材にした「安城家の兄弟」などがある。舞台関係の仕事にも造詣が深く、原作、戯曲、演出などでも活躍した。昭和三十四年、文化勲章受章。昭和五十八年没。

 有島三兄弟は、文才、画才ほかそれぞれの才能を開花させたが、書でもそろって有名だった。

〈(武郎の)書は三人のうちで一番伸びやかで品位に勝っている。弟の里見弴の能書が早くから一般に知られたのは、その書の力強さとわかりやすさにもよろう。生馬の書は玄人を痺れさせる含蓄の筆である。妄りに甲乙はつけ難いが、生馬の打込みが一段と深い。いわゆる画家の書とも違う〉(「別冊 墨 近代芸術家の書」より)

 写真は昭和三十年、有島邸にて撮影。

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