──猫好きに嫌われてしまったんですね。
朱川 好きだからこそ、逆のことを書いちゃうということがあるじゃないですか。好きなものが痛い目にあっていると、自分の胸が苦しく切ないという。
──『スメラギの国』は長篇ですが、朱川さんは長篇をお書きになるのはお好きなんですか。
朱川 僕はスティーヴン・キングが好きなので、長篇を書こうとすると彼のように、やたら長く書いちゃうんですよ。そこが欠点ですね。他社で刊行予定で千枚を超えているものがあります。あと今進めているもので六百枚を超えているものもあります。一人称だと長篇は書きにくいじゃないですか、だから複数の視点から書くんですが、そうするとものすごく長くなるんです。
──人称の話が出ましたが、朱川さんの作品は一人称が多いですね。
朱川 三人称で書くこともありますが、過去を振り返る話では一人称が一番書きやすいですね。
作家ではキングも好きですが、僕は太宰治も好きなんですよ。一人称の作品ですね。中学のときにはまりまして、その影響があります。だから、太宰のように女性の一人称を使うのにも何の抵抗もないです。
──たしかに今回も女性の一人称を使った作品があります。
朱川 『花まんま』の「妖精生物」を読んだ読者が、作者の僕のことを女性だと思い込んでいたらしいですよ。
──太宰、キングのお話が出ましたが、子供の頃は江戸川乱歩、コナン・ドイルを愛読されていたようですね。
朱川 乱歩、ホームズだけだったら、僕の作品は違う方にいっていたと思うんですよ。ミステリーは読むのは好きですけど、トリックで読者を驚かそうとか、自分で書こうとはあまり思わないですね。ホラーも、あまり血みどろなのはどうか、と。太宰治は僕にとっての「親」のような存在です。いつかは越えなければならない目標ですね。越えられるかはわかりませんが……。読み返す度に、嗚呼(ああ)そうだったのか、という発見があります。太宰の作品のように心に刺さる作品が目標です。その刺さり方もいろいろですけれど、いい刺さり方にしたいと思っています。読者にいい影響を与えたい、と。太宰が生きていた頃はいやな刺さり方が受け入れられた時代だったのでしょう。僕は、みんな頑張ろうよ、みたいな感じを与えたいですね。勇気とか元気とか。これからもどんどんそういう作品を書いていきたいですね。
今回は赦される話、報われる話を書きました。この本は自分の中で十分に満足のできる短篇集です。
──最後に、これから書いていきたい小説の構想はありますか。
朱川 そうですね。四百枚台で収まる長篇を数多く書きたいですね。それと、ホラーというくくりに入らない作品をいっぱい書きたいと思っています。
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