インタビューほか

鶴田真由×海堂尊
「ゲバラは旅で成長した」

「オール讀物」編集部

『ポーラスター ゲバラ覚醒』 (海堂尊 著)

いまなおカリスマ的人気を誇る革命戦士の青春旅行を描いた海堂さん。ドキュメンタリー番組で、キューバを訪れた鶴田さんと、ゲバラの魅力、旅の醍醐味について存分に語り合った。

人生を変える旅について

海堂 鶴田さんはドキュメンタリー番組の取材などを含めて、40カ国以上に旅をされていると聞きました。旅に魅了されたきっかけというのは?

鶴田 先日も、NHKの番組でイランに行かせていただきましたし、たくさん旅をしてきました。きっかけは、20代後半のころ、自分が悶々としていた時期があったんです。仕事をよくご一緒する女性で、年末になるとインドやネパールに旅に出る方がいて、彼女に「私は今、いろんなことを吸収できそうな気がする。今年インドに連れて行ってくれないか」と頼んだら、「今と思うなら、今行きなさい。インドじゃなくてもいいのよ」と言われて、初めて一人旅に出たんです。

海堂 どこに行ったんですか?

鶴田 屋久島です。そうしたら、自分の腑に落ちるような出来事が次々に起こって、抱えていた謎が解けていったんです。このときから「今、こうしたほうがいい」と思ったときは絶対に動くようになりましたね。

海堂 面白いですね。自分の中でタイミングが熟していたときに、そばにメンター(人生の指導者、助言者)がいたということ。そのメンターの存在を嗅ぎ当てて、アドバイスを求めた。私たちは、なかなかその存在に気付くことができないんですよ。他には印象に残っている旅はありますか?

鶴田 NHKの番組(『アジア海道“不思議の島々”をゆく~鶴田真由 2000キロの旅~』)で訪れた“魔女の島”といわれるインドネシアのライジュア島への旅が、心に残っています。この島の一番大きな祭りが、9日間に及ぶ死者供養の祭り「タオレオ」なんです。ただ、1週間以上かけて祭りをすると経済的負担も大きいですから、幻とされるくらい減ってきているなかで、滞在中に偶然、長老が亡くなり、取材ができるようになったんです。滞在中のある夜に散歩に出たんですが、新月で満天の星空が広がる中、石灰でできているヤシの並木道だけが白く浮かび上がっていて、まるで宇宙の中に浮遊しているようで……。自分の軸を失って、宙を浮いている感覚になったんです。そのまま歩いていくと、突端では白い道さえなくなって、海と星空だけに。宇宙の中にポツンといる感覚を味わいました。宗教儀式というのは、こんなにも宇宙とシンクロしているんだな、と思ったんです。

海堂 まるで、鶴田さんのための旅ですね。

鶴田 そうかもしれないです。ずっとマジックにかかったような気持ちで、その島の存在が初恋の相手みたいになりました。同じ時代なのに、ライジュア島には縄文時代のような空気が流れていて。不思議な感覚なのですが、船でその島を離れると、眠りから目が覚めて夢が消えていくときのように、記憶がスーッと消えていったんです。

海堂 こういう話は、小説家にとって、とても有難い。そのワンシーンを描くというよりも、数年後に新しい作品を書く根っこになるというか。その時には、鶴田真由さんに……。

鶴田 「捧ぐ」と(笑)。さきほど、海堂さんが小説を書かれている時のマインドをお聞きしていて、私が旅をするときの考え方や生き方と似ているなと、感じていました。自分には旅の最終地点は見えているし、ところどころ大きな石があるところは、多分こういうことかなっていうのは何となく理解できている。だけれども、その他は10秒単位で経験しながら繋げていくしかない、というような。

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ポーラースター ゲバラ覚醒
海堂尊・著

定価:本体1,750円+税 発売日:2016年06月11日

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オール讀物 2016年7月号

定価:980円(税込) 発売日:2016年06月22日

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インタビューほかゲバラの決定版を書こうと思い、現在はこの作品群に専念しています(2016.06.16)