
- 2016.07.07
- インタビュー・対談
鶴田真由×海堂尊
「ゲバラは旅で成長した」
「オール讀物」編集部
『ポーラスター ゲバラ覚醒』 (海堂尊 著)
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
海堂 そうですよね。長期の行き先と短期の行き先があるのは大切ですが、そこをアスファルトで道路のように固めちゃうと何も生まれない。次の飛び石に飛ぼうと思って水に落ちるとか、そういうことが大事じゃないかと思うんです。鶴田さんのマインドというのは、『ニッポン西遊記』を拝読して思いましたよ。「あっ、いい加減な旅だな」みたいな(笑)。
鶴田 そう、いい加減なんです(笑)。でも、起こったことに反応できるような準備だけはしておこう、とは思っています。海堂さんにとって、小説を書くということは、まさに旅なんですね。書きながら、何かを感じとって、次に書くことに繋げていく、という。
海堂 その通りかもしれないですね。小説の世界では今、僕が神さま。何でもできるからこそ、ちゃんとしたものを作らなきゃいけないという責任もある。だからここ最近は、もっぱら1950年代の中南米の世界に潜っているような生活です。たまにこうやって2016年の東京で美女と会うと、タイムトラベルしてきたような感じになりますね(笑)。
鶴田 続編のご執筆も始められているということですが、ゲバラの旅は今後、どうなっていくのでしょうか。
海堂 次作となる第2部は、中米編です。ゲバラにボリビア革命を体験させて、ペルー、パナマ、コスタリカ、ニカラグア、グアテマラへ。第3部はカストロ編で、カストロが生まれてから、モンカダの反乱で挙兵してメキシコに亡命するまでを書きます。このとき、メキシコでゲバラと会うんです。第4部では、キューバ革命を描きます。
鶴田 革命を成功させた2人がどうなるかも気になります。カストロと別れてゲバラが亡くなるまでというのは、やっぱり相当つらい時期だったんじゃないかと思うんです。革命を成功させるまでは、辛いことが多くても実を結んでいく、という物語だったのが、キューバを出た後は、まったく実を結ばないまま、ゲバラは命を落とす、というイメージが私の中にはあって。晩年、ゲバラはどんな思いだったのかな、と考えてしまいます。
海堂 おっしゃる通り、この作品の完結にむけて、大切なモチーフになると思います。そのときのゲバラの思いというのは、これまでに積み上げてきたものの総括になるでしょう。
鶴田 ゲバラにとっては、革命が一つの区切りだった。自分はもともとキューバの人ではないし、もっと違う志みたいなものがあったでしょうし、カストロはやっぱりそこからキューバという国家を作っていくという、ある意味スタートだったかもしれない。革命後に、2人がずれていくというのが興味深いです。
海堂 実は私は、その部分を描きたくて、ゲバラを題材にしたんだと思っているんです。でも今は全然見えていない。鶴田さんのおっしゃっている通りかもしれないし、全然違うことになるかもしれない。そればっかりは、書いてみないと分からないですね。
鶴田 ラストまで早く読みたい。
海堂 鶴田さんを納得させられるものを書けるよう頑張ります(笑)
衣装協力◎ヨーガンレール(鶴田さん)
写真◎深野未季
聞き手◎オール讀物編集部