──動物の中でなぜヒトだけが「言葉」をもつようになったのか? その謎にせまる最先端の研究成果をまとめたのが、この作品ですね。
岡ノ谷 はい。「言葉の起源をめぐる研究」というと難しく聞こえてしまうかもしれませんが、石森愛彦(よしひこ)さんのわかりやすいイラストを豊富に盛り込み、文章表現も可能なかぎり噛み砕きました。小学校高学年から大人まで楽しめる内容になったと思います。
──好評を博した『素数ゼミの謎』(吉村仁<じん>著・石森愛彦絵)と同じ形式ですね。オールカラー、百二十八ページで千五百円(税込)と、お値打ち感もあります。 ところで、なぜ「言葉の起源」を研究テーマに選んだのでしょう?
岡ノ谷 それは少年時代まで遡ります。私は栃木県の田舎の出身ですが、さまざまな動物に囲まれて育ちました。実家にはヤギやチャボがおり、私はハムスターやリスをはじめ、あらゆる生き物を飼っていました。その頃から、「なぜ動物には言葉が通じないんだろう?」「自分のような『こころ』は動物にもあるんだろうか?」と、現在の研究につながる疑問を漠然と抱いていましたね。
──その志を持ち続けて研究者になったのですか?
岡ノ谷 いえ、そうスムーズに物事が進んだわけではなく、むしろネガティブな紆余曲折ばかりの人生でした。まずは大学進学時。本当は理系に進みたかったのに、数学と物理が絶望的にできなかった(苦笑)。浪人の末、文系でも動物について研究できるところはないかと探し、動物行動学を勉強できる心理学科に入学したのです。
当時、私はコンピュータと音楽にも興味があり、自分で秋葉原に行って部品を買い揃え、シンセサイザーをつくって遊んだりしてました。それで、動物とコンピュータと音楽を同時に生かせる方法はないかと考え、「トリには音楽の情緒がわかるか?」というテーマで卒論を書きました。卒業後は大学院を受験したのですが、なんと不合格。しかし幸いにも卒論を評価して下さる方がおり、米国メリーランド大学の大学院に進学できたのです。五年間アメリカでトリの聴覚について研究を重ね、博士号を取得して帰国しました。
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