インタビューほか

昭和天皇の決定版評伝

「本の話」編集部

『昭和天皇 第七部 独立回復(完結篇)』 (福田和也 著)

昭和天皇の資質と悲運

――君主としての昭和天皇を、どう評価されますか?

福田 昭和天皇が戦争末期から昭和36年まで住んだ皇居内の「お文庫」の執務室にはリンカーンとダーウインの胸像が飾られていたと、元側近たちから聞きました。現人神と崇められていた君主が、敵国であるアメリカの英雄と、進化論の提唱者を尊敬していたとは何とも皮肉な話です。ことほどさように、天皇裕仁は常識的で、世界の情勢によく通じていたと思います。しかし裏を返せば、ルールから外れることのできないきまじめさが、悲運を招いたとも言えます。

 軍の強硬派に不満を持ち、米英との開戦をできれば避けたいと考えながらも、立憲君主としてはやはり内閣が決めたことを根底から覆すことはできない――その懊悩の中で、最終的には開戦を決断せざるを得なかった。

 軍事にも通じており、戦局が悪化してゆくだろうとも、早くから予想がついていたと思います。だからこそ、東京大空襲の後、東京の下町の惨状を視察した時は、身を切られるほどつらかっただろうと想像します。終戦についても、もっと早く講和し、犠牲を少なくすることができたのではないか、と言う人もいます。しかし、客観的に見ればそれは難しく、常識的な昭和天皇であったからこそ本土決戦をかろうじて避けることができたのではないでしょうか。

――昭和天皇の時代から、われわれが学ぶことのできるヒントとはどんなものでしょうか?

福田 東日本大震災の後、今上天皇皇后両陛下が被災者を直接見舞ったことで、国民の統合が保たれたのは事実でしょう。皇室の今後についてはさまざまな議論がありますが、少なくとも昭和天皇の時代にも多くの危機を乗り越え、今の皇室と日本があるという歴史は知っておくべきだろうと思います。

昭和天皇 第七部
福田和也・著

定価:1,600円+税 発売日:2014年04月18日

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