もし日本のプロ野球の12ある球団が四つに統合され、メジャーリーグの傘下に入るということになったら、あなたはどういう反応をするだろうか。
「90年代にパリーグが一致団結してセリーグとの交流戦をやろうとした時期があったんですが、そのときにふと思ったのは、もしパリーグが日本を飛び出してメジャーに行くと言ったら、セリーグは腰を抜かすだろうな、と。それが頭の中にあり、ここ数年、プロ野球人気が下がってテレビの地上波でなかなか試合が見られなくなり、2年ほど前にTBSが横浜を売りたくても買い手がつかなかったときに、これは起こりうると、思い出したんです」
弱小球団・横浜ベイズは、アメリカ仕込みで独自の理論を持つ若き副GM大野俊太郎を迎えてから好調で首位を走っていたが、突如、球界の盟主・東都ジェッツとの合併話が新聞記事となる。反発する寝耳に水の選手や大野らスタッフたち。しかし、真相はそんなレベルの話ではなく――。
実は、ジェッツを所有する東都新聞の国際事業室長・牛島輝也は学生時代、米フットボール選手だったが、当時の人脈を使い、経営難の日本プロ野球をメジャーリーグの極東地域チームに編入させることを画策していたのだ。
それが明るみに出ると、当初は合併に反対した選手やファンもメジャーへの魅力の前に反応は急変。だが、すべての選手がメジャーリーガーになれるはずもなく、試合のための移動は、審判やスタッフは、フランチャイズはどうなり、ドラフトはどうするのか。問題は山積で、あまりの急な展開に多くの人々が翻弄され、とまどう。
「僕自身は、そうなったら面白いけど決してそうなってほしいと思っているわけではない。いざというときに、皆さんがあらかじめ考えておいて、正しい判断ができるよう、世論を二分するような小説を書きたかったんです。だから、絶対的に意見が分かれる結末がこの小説のゴールと考えていました」
アメリカ在住の経験がある大野と牛島。立場や意見は違うが、どちらも物事を感情的ではなく戦略的に見る能力に長け、メジャーの力は認めている。そのうえでどう行動するのか。日本プロ野球の行方に結論が出るとき、2人は勝者と敗者に分かれるのだろうか。
「最初はこの2人の視点で書いていたのですが、そのうち登場人物は何人いてもいいと考え直しました。各球団のオーナー、選手や審判、ファンなどいろいろな人間の心がうごめき、シンクロし、最後は一体化していくような書き方が面白いなと思って」
壮大なシミュレーションだが、リアリティがあり、最後まで目が離せない。
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