まずは前作、『国語、数学、理科、誘拐』の回想からはじめたい。3年前、まだ塾講師と作家の兼業だった頃、「塾を舞台にしたミステリをやりませんか」と誘われ、「やりましょう」と答えたのがはじまりだった。とっかかりが欲しくて担当編集のI氏に「どんなミステリが好きなんですか?」と聞いたところ、彼はタイトルに『誘拐』とあるととりあえずその本を買ってしまうくらいの「誘拐モノ好き」だったのだ。タイトル即決である。
タイトル先行の苦労もあったものの、実際に塾で使用していた年号語呂合わせなどを詰め込んでなんとか刊行までこぎつけ、「世界初の塾ミステリ」として好評を得た。ミステリ部分よりも、塾の営み、勉強への姿勢というところに共感を持ってくれた読者が多かったのではないかと自分では思っている。
さて今回の連載は、そんなJSS進学塾シリーズ(?)の第2作。悩んだのはやはりタイトルだ。小料理屋でのキックスタート会議はあたかも『国語、数学、理科、~』というお題の大喜利のようであり、『密室』『暗号』『誤爆』などの案の他、某新人賞受賞作にあやかって『国語、数学、理科、○○』にしてしまおうかなどという意見も出た。結果、島での特別夏期講習にして『漂流』となったのだ。……夏の島での、眩しくも勉強漬けの3泊4日。「こんな夏期講習、あったらいいかも知れない」という気持ちで楽しんでいただければ嬉しい。
「別冊文藝春秋 電子版2号」より連載開始
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