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「サッちゃん」の作詞者は<br />人間愛を描いた芥川賞作家 阪田寛夫

「サッちゃん」の作詞者は
人間愛を描いた芥川賞作家 阪田寛夫

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

「サッちゃん」「おなかのへるうた」「ねこふんじゃった」「誰かが口笛ふいた」といった、子供の頃に誰しも口ずさんだ歌を作詞したのが、芥川賞作家・阪田寛夫だ。

 大正十四年(一九二五年)、大阪の敬虔なキリスト教徒の両親のもとに生まれる。子供の頃から詩と音楽を愛し、土地柄から、宝塚ファンの少年であった。東京帝国大学では三浦朱門と同人誌を創刊。卒業後は放送局でラジオ番組を制作する。

 退社後、昭和五十年(一九七五年)に「土の器」で芥川賞を受賞。骨折しても教会のオルガンを弾き続けた母の闘病と死を描いた、家族愛、人間愛に満ちた小説である。同時に児童文学も数多く手がけ、同じ年に出版された「桃次郎」は、桃太郎の弟が、鬼が島の子とともに生きる道を選ぶ物語だが、劇団四季のファミリーミュージカル「桃次郎の冒険」の原作となっている。平成十七年(二〇〇五年)に七十九歳で没。翌年、阿倍野区の幼稚園に「サッちゃん」の歌碑が建立された際に招かれたのが、阪田の次女・大浦みずき(宝塚トップスター)であった。

 ちなみに、阿川弘之氏は御近所で親しくしており、その娘が「サッちゃん」のモデルだと阪田が述べた、という「伝説」がある。すなわち阿川佐和子さんだ。のちに本人は、この阿倍野の幼稚園に通っていた頃、幼馴染の女の子が転園していった思い出を書いたと語っているが、阿川さんは名前のイメージモデルではあったのかもしれない。

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