
- 2010.05.20
- インタビュー・対談
空港で起きるトラブルと恋愛をコミカルに描く
「本の話」編集部
『恋する空港 あぽやん2』 (新野剛志 著)
出典 : #本の話
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
──旅行会社の成田空港支所に「飛ばされた」主人公・遠藤が、空港特有のトラブルに巻き込まれながら成長していく『あぽやん』は大変評価も高く、第一三九回直木賞候補にもなりました。連作短篇集として、この作品から空港の様々なことを初めて知った読者も多いと思うんですが、今回その続篇『恋する空港 あぽやん2』を上梓されました。編集部から「続篇を」という依頼を受けたときに、すぐに次の構想は浮かんだのでしょうか?
新野 もともと「別册文藝春秋」に『あぽやん』を連載中は、連作読み切りでしたが、主人公が成長していく話ということで、わりと全体的に繋がりがある流れでした。単行本として刊行されて読者に支持されたのは、やはり主人公・遠藤が物語の中で少しずつ成長していくというのが理由なのだろうと思いまして、次の連載ということになったとき、毎回、空港の中で何か事件が起って終わりではなく、一つの流れを持った作品としても読めるようなものにしよう、という考えはありました。
──今回、物語の要素の一つとして、空港は事故とか、自然現象とか、死と隣り合わせの場所である、ということが盛り込まれています。
新野 そうですね。これは必ずしも空港だけじゃなく、いわゆる一つの仕事の中で、命とか、あるいは自然とか、そういうものが何かしら関わってくる部分があるのでは、というストーリーになっていると思います。
──第一話ですが、空港で昨日見送ったばかりの人と不慮の別れをすることになるかもしれない可能性を見せて、次の第二話が赤ちゃんの誕生の話であるというのは、すごく面白いですね。
新野 前作と変わらずに、ある種、ユーモアをちりばめながらそれぞれのストーリーを楽しめるものにはなっています。ただ、第一話から人が亡くなったり、その後も会社の経営状況、外部の経済環境やら、財務状況などによって空港所の閉鎖という流れになっていく、トーンとしてはわりと暗い話に……一つの筋としては暗いものがあったりするのですが、それはもともとそうしようと思っていたわけではないんですね。連載中に現場に取材にいったら、空港所閉鎖という話が実際にあって。それが主人公を通して改めて仕事を見直すことにつながりました。
──ということは、取材がこの流れを生んだと。
新野 職場がなくなるということが、仕事というものを本当に意識させるのかもしれないし、あるいは自分と仕事との距離感が分かるのではないかな、と。それで主人公の遠藤自身も職場がなくなるとなったときに、単純に会社の中の一つの部署が消えるというより、今、自分が働いている仲間たちと会えなくなる、ということに対する辛さを書こうと思いました。そして、今まで培(つちか)ってきた仕事は、空港所という場所が失われてもそこに何かを残すことができるのではないか、というふうに書いてみました。
──連載一回ごとに事件が起こって、解決してという構成ですが、まずは最初の「テロリストとアイランダー」には、新しいキャラクターとして、枝元という人間が登場してきましたね。
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