書評

天安門事件主要メンバーが描く中国膨張の内幕

文: 富坂 聰 (拓殖大学教授)

『日米中アジア開戦』 (陳破空 著 山田智美 訳)

〈二〇一三年三月、習近平がロシアを訪問する前夜、ロシアの駐中国大使館が中国版ツイッター微博(ウェイボー)にアカウントを設置すると、思いがけず大量の中国ネットユーザーからの攻撃に晒され、辛辣に揶揄するメッセージが二日弱で三万通も書き込まれた〉というのだ。

 そして、実際に書き込まれたメッセージは両国国民間の感情が思いのほか複雑であることを知らしめた。

 本書では、具体的な書き込みとして、〈「中国人民に最も大きな損害を与え、最も多くの中国の領土を占領し、中国が内戦に陥るのを喜び、中国民主化を極度に遅らせた張本人。血債累々だ」、「人を害する思想主義を突っ返して、神聖な領土を取り戻してこい」〉という2つが紹介されているが、もっとたくさん読んでみたいと思った。

 いずれにせよ対日本の歴史の清算が終わっても、中国の歴史問題は終わらないという問題の根深さを予感させ、同時に日本問題はむしろ本番前の準備体操のようなものだと位置づけられるのかもしれない。

 ロシアの慎重すぎる対中外交の裏側にはこうした累積した感情の存在があり、一旦火を噴けば大火事は免れないといった事情があるのかもしれない。

 さて、本書で示される日米中開戦のシミュレーションだが、もともと高めの筆者のテンションがさらに高まっていることが感じられ、非常に面白かった。開戦のシナリオは決まった材料で料理を作るようなものだが、「なるほど、その2つを組み合わせたか」といった内容だ。

 ただ、尖閣が舞台であれば難しいのは占領することではなくそれを維持することだ。それが難しいから中国は手を出さないとも考えられるが、筆者はこの点をどう考えているのか訊いてみたいものだ。

日米中アジア開戦
陳 破空・著 山田智美・訳

定価:800円+税 発売日:2014年05月20日

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