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相撲界の発展に尽力した春日野清隆

相撲界の発展に尽力した春日野清隆

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 前回登場した初代若乃花幹士のライバルだったのが、栃錦清隆(本名大塚清、後に中田姓となる)。大正十四年(一九二五)年生まれ。昭和二十年代末から三十年代前半にかけて、「栃若時代」と呼ばれる大相撲の黄金時代を築いた。現役時代、「土俵の鬼」若乃花に対して、栃錦は若乃花と同じく小兵ながらしぶとく食い下がる取口から、「土俵の名人」あるいは「マムシ」と呼ばれた。 とりわけ、史上初めて両横綱が十四戦全勝同士で千秋楽を迎えた昭和三十五年(一九六〇年)の三月場所は、空前絶後の盛り上がりをみせた。決戦の前夜、なかなか寝付くことのできない若乃花が映画館を訪れると、前の席に髷姿の力士が坐っていた。よくみると、それは同じく眠れなかった栃錦だったというエピソードは有名である。

 幕内優勝回数は若乃花とおなじく十回。技能賞も九回受賞し、近代相撲の完成者との評価を得た。引退後は春日野親方として、日本相撲協会理事長を十四年の長きにわたって務めた。その間、現在の両国国技館を借金なしで建設するなど、相撲界の発展におおいに尽力した。写真は昭和四十九年撮影。平成二年(一九九〇年)没。

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