- 2011.05.20
- インタビュー・対談
連載開始から25周年、
ますます好調の陰陽師ワールド
「本の話」編集部
『陰陽師 醍醐ノ巻』 (夢枕獏 著)
出典 : #本の話
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
,#歴史・時代小説
「陰陽師」シリーズの最初の作品が「オール讀物」に掲載されたのが1986年の9月号ですから、この秋で25周年ということになります。もう四半世紀も経ってしまったのかというのが正直な気持ちですね。ぼくには20年、30年と続けている連載が多いんですが、短篇連作という形式で続いているのは「陰陽師」だけになりました。
じつは長篇の連載は、枚数がくればあとは次号へということが可能なんです。ところが一話読切だと、毎回きちんとお話を完結させないといけない。これがなかなかたいへんなんです(笑)。その都度長くなったり短くなったりはしますが、晴明が事件を解決してくれるまで書き続けないといけない。ぼくにとっては異色の連載ですね。
26歳でデビューしているので、「陰陽師」を書き始めたのはちょうどデビュー10年目くらいの頃です。ぼくの作品で最初に売れたのは、エロスとバイオレンスをふんだんに盛り込んだ伝奇小説でした。それで似たような作品の注文が殺到したんです。でもぼくはもっといろんな作品を書きたいと思っていたんですね。それで「陰陽師」を書きだしたようなものです。
約10年前から、ずっと書き続けてきた長篇シリーズを完結させることを意識し始めました。過去の例をみると、70代になるとほとんどの作家は仕事の量が減ってくるんですね。だから自分も70歳までにどれだけの作品が書けるかと考えたら、いま書いているシリーズを終わらせないと、自分が死ぬまでに書きたい小説が書き終わらないということに気がついた。もちろん死ぬまで書き続けていって未完のまま終わらせるということもできなくはない。でもそれでは読者に悪いなと。それに、ぼくには新たに書きたい作品の構想がやまのようにある。たぶん来世もう一回作家になっても書くことに困らないくらいあります。新しい作品にとりかかるには、いま書いている連載を終わらせないといけない。そう思いはじめてから10年たってやっとぼつぼつ完結する作品がでてきました。