- 2011.05.20
- インタビュー・対談
連載開始から25周年、
ますます好調の陰陽師ワールド
「本の話」編集部
『陰陽師 醍醐ノ巻』 (夢枕獏 著)
出典 : #本の話
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
,#歴史・時代小説
小説を終わらせるのは難しい。小説を書いていて一番楽しいのは、大風呂敷を広げているときなんです。どんどん話が膨んでいっているときが一番楽しい。ところがいざ話を閉じるとなると、つまらない終わり方にならないようとても気を使います。だから一つの作品が完結するとほっとしますね。
じつは今年60歳になったんです。この歳になったからには歳相応の小説を書きたいとも思うのですが、読者はなかなかそう思ってくれない。20代、30代の頃から書いているシリーズだと、いまだにその頃のような世界を熱烈に求める読者がたくさんいます。でもあたりまえですが、あの頃のようなわけのわからないエネルギーと、今のエネルギーとは少し質が違うんですね。あの頃はまだ作家として売れるかどうかもわからなかったし、やりたいことが一杯あった。いろんなものが詰まってはち切れそうな体をしていた。脳も筋肉ですから、単純な筋力で言えば、あの頃持ちあげられたものは、今は持ちあげる筋力がない。別の筋力、別の技を使う。
そのなかにあって「陰陽師」は、1話完結ということもあって永遠に書き続けられる作品だと思っています。たぶん死ぬまで書き続けると思います。25周年ということで、映像化もふくめていくつか大きなことがありそうです。岡野玲子さんの漫画も連載が再開しています。ファンの方には期待して待っていただきたいと思います。
また「別册文藝春秋」7月号から、3年間中断していた『ダライ・ラマの密使』の連載を再開します。これまではヒマラヤの氷に覆われた世界を書いてきましたが、これからはタクラマカン砂漠へと舞台が移っていきます。最後はシャンバラに辿りつくまで書かないといけないのでまだまだ先は長いですが、これからの砂漠の冒険はきっと面白い物語になります。
思えばこの30数年、雨の日も風の日も親が死んだ日も猪木が負けた日も女が逃げた日も(笑)書き続けてきました。どんなときでも締切は待ってくれませんから。そしてついに尊敬する手塚治虫さんが亡くなられた歳と同じになってしまいました。幸いだいぶ体にガタはきていますが、まだまだ元気です。体のケアをしつつ、頑張って書き続けたいと思っています。
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