- 2013.03.12
- 書評
道徳の教科書として、一家に一冊必要な本です
文:辛酸 なめ子 (漫画家・コラムニスト)
文春ムック「日本が震えた皇室の肉声~皇族・側近はこんなに『文藝春秋』で語っていた」
ジャンル :
#ノンフィクション
「普通だね」がほめ言葉
「皇族・側近はこんなに『文藝春秋』で語っていた」というコピーが添えられた表紙をめくると、ハープの横に佇んでいらっしゃる、超絶的にお美しい美智子皇后陛下のお写真が。とはいってもベールに包まれた皇室なので、あたりさわりないエピソードばかりなのでは? とそんなに期待せずに読み進めると、美談から赤裸々な秘話まで幅広く、驚きの連続でした。
櫻井よしこ氏による寛仁親王殿下のインタビューでは「私の姉妹弟たちも、それから2人の娘たちも経験しているはずですが、学習院の初等科時代、クラスメイトから、『お前たちは俺たちの税金で食わせてやっているんだ』という嫌味なことを言われるのですよ」と、世知辛い思い出を告白。病気になっても保険はきかず、雇っている侍女の人件費で歳費の半分は飛ぶ、という、宮家の経済事情まで打ち明けていらっしゃいます。寛仁親王家の女王姉妹のインタビューでも、庶民的なエピソードをご披露。彬子女王殿下はイギリス留学中ジーンズをお召しになり、寮では自炊をされカレーやうどんを作られていたとか。「普通だね」というのが自分にとってのほめ言葉だという瑶子女王殿下は、会社に電車通勤し、コピー機の用紙を補充されたりもするそうです。でも、「早く苗字が欲しい」という常人離れしたお言葉を漏らしたり、「そうでございますね」と上品な言葉遣いが出たりするお2人は、さすがプリンセスの品格が漂います。
雅で浮世離れした感性
言葉遣いといえば、「昭和天皇秘話 宮中賢所物語」という記事で、元内掌典の高谷朝子氏の、天皇家の方々についての表現が、敬語の極みといった文体でした。「御機嫌ようおいであそばしまして、お変わりなく、御拝あそばしますことは、まことにありがたいことでございます」という調子で、お側に仕えていた方がこのような言葉遣いをせずにはいられないほど、皇族の方々はやんごとなき気品を漂わせていらっしゃるのでしょう。
昭和天皇と皇后陛下はお食事中、お花や植物、生物学や音楽の話をされていたとか、美智子皇后陛下は御所の中のユウスゲの花を「お月さまのような色でしょう? 」と表現されていたとか、雅で浮世離れした感性にも驚嘆の念を禁じ得ません。道徳の教科書として、一家に1冊必要な本です。
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