書評

<『日本の論点2010』に寄せて>
政権交代後の「論点」

文: 田原 総一朗 (ジャーナリスト)

『日本の論点2010』 (文藝春秋 編)

「オープン化」がこれからの政治の鍵

  アメリカでは、新大統領が登場すると、マスメディアは一〇〇日間はじっと見守り、批判、非難をしないという“一〇〇日ルール”なるものがある。民主党の様々な問題や矛盾も、政権が発足してまだ時間が経っておらず、不慣れな故の出来事だともいえる。だが、問題は多々ありながらも、政権が交代したために明らかになった、自民党との差異がある。

 民主党は、かねてから「自民党の政治は密室、談合だ」と強烈に批判していた。私は、自民党の政治は民主党が決めつけるほど“密室政治”ではなかったと捉えているが、政策決定の経緯で不透明な部分が多かったことは確かである。

 それに対し民主党は、政治を徹底的に透明にする、政策決定の過程を国民にオープンにすると力説していた。この点について、私は率直に言って民主党の主張をそれほど信用していなかった。長年自民党の政治を取材していて、政治の透明化がいかに難業であるかを知っていたためである。それに自民党は、根本的に“由(よ)らしむべし、知らしむべからず”という考えを持つ官僚への依存度が高かった。

 ところが民主党は、事業仕分けなる作業を公開でやり出した。二〇一〇年度予算が、自民党政府が策定した二〇〇九年度予算を八・五兆円も上回ったため、仙谷由人行政刷新大臣の下で四四九事業の仕分けを公開でおこなうことになったのだ。そして、仕分けられる省庁側の高級官僚たちが仕分け人に言い込められ、答えに窮するといったシーンが相次いで生じた。ともかく生の真剣勝負である。九日間、見物人も多く、連日テレビや新聞でも大きく報じられた。仕分け人の一人である蓮舫(れんほう)参院議員などは、当初は若いくせに生意気だ、傲慢だと激しく非難されたが、日が経つにつれてスターとなった。

 自民党の時代ならば、官僚が非公開でおこなってきた政策プロセスが初めてオープン化された。さらに、この公開事業仕分けは、国民の八〇パーセント近くの支持を受け、見世物としても人気を博した。

 それだけではない。自民党時代には隠されてきた、核兵器持ち込みの密約も、民主党政権は明るみに出そうとしている。民主党にも問題は山積しているが、政治を透明にする、政策決定の経緯もオープン化する点では、次第に自民党との差異が明確になってきている。

 このオープン化こそが、日本の政治を変える鍵となる――私自身が『論点2010』に寄せた論文で強調したのも、そのことだ。

日本の論点2010
文藝春秋・編

定価:2900円(税込) 発売日:2009年12月07日

詳しい内容はこちら