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ギネス記録を持つ“元祖・国民作家”山岡荘八

ギネス記録を持つ“元祖・国民作家”山岡荘八

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 NHK大河ドラマの原作ともなった「徳川家康」は、文庫本で全二十六巻、原稿用紙にして一万七千四百枚に及び、ギネスブックでも「世界最長の小説」のひとつに認定されている超大作だ。新聞連載は昭和二十五年(一九五〇年)にはじまり、昭和四十二年に完結。織田・今川の「両超大国」の狭間の弱小国に生まれながら、辛苦の末に戦争のない社会を実現する「平和の創造者」としての家康、これこそ戦後における「理想の日本像」そのものであり、当時の日本国民に熱狂的に受け入れられたのも当然だろう。

 明治四十年(一九〇七年)、新潟県北魚沼郡生まれ。本名は山内庄蔵、のちに妻の藤野姓を継いだ。印刷所の文選工などを経て雑誌編集者となり、昭和十七年より従軍記者として活動。多くの特攻隊員を取材した経験が、のちの諸作品を貫く思想的背景になった。

 写真は昭和三十六年、「徳川家康」連載中の頃。その後も「織田信長」「坂本龍馬」「源頼朝」「吉田松陰」「高杉晋作」「伊達政宗」と、日本史の偉人を真正面から取り上げた長編小説を数多く発表し、「日本国のあるべき姿」を描き続けた。

 保守系の政治家・文化人とも多く付き合った。昭和四十九年「日本を守る会」(「日本会議」の前身)の結成メンバーとなり、自衛隊友の会会長も勤める。昭和五十三年、七十一歳で没。

 なお、民主党衆議院議員の山岡賢次氏は、娘婿である。荘八の没後に養子縁組し、「山岡」に改姓している。

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