- 2012.09.06
- 書評
長寿ブームの火付け役・白澤医師による長寿生活の実践手帳
文:長田 昭二 (医療ジャーナリスト)
『100歳までボケない101日手帳〔書き込み式〕』 (白澤卓二 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
「健康ブーム」といわれて久しい。ブームというものは往々にして一過性のものだが、健康ブームは終わらない。健康でありたいと願う人間の根源的な希望が、生きている限り続く以上、健康ブームにも終焉は訪れないのだ。
そこに、突如として湧き起った「長寿ブーム」は、大きな意味で健康ブームの延長線上にあるものといえる。
『100歳までボケない101の方法実践編』の著者白澤卓二氏は、アンチエイジングの第一人者として知られる医師であり、長寿ブームの火付け役。数多くの「長寿本」を著し、それらが悉くヒットしていることは周知の通りだ。
白澤氏は世界中の「長寿」「老化」に関する膨大な数の論文を精査し、そこに自身の研究結果を重ね合わせることで、根拠のある、具体的な長寿法を編み出してきた。それはいずれも大掛かりな取り組みではなく、日常での小さな工夫の数々だ。氏の著作が多くの人に支持される背景には、「私でもできる」という手軽さに加えて、「それを実践して長寿を実現した人がいる」という強い説得力があることは間違いない。
長寿法は実践してこそ
しかし、長寿本を読んだだけでは長生きはできない。書かれていることを実践しなければ意味がないのだが、それが難しい。そこで白澤氏は、長寿への取り組みを実践に結びつけるための支援に乗り出した。それが本著だ。
序盤と欄外に白澤医師からのアドバイスが書かれているほかは、基本的に読者自身が日々の健康への取り組みを記入していく作りとなっている。書き込む内容は、血圧、体重などの身体情報から、食事内容、外出先、歩数などの健康情報。さらには「その日会った人」「気になったニュース」など、あとで読んで楽しめる項目もある。所定長寿ブームの火付け役・白澤医師による長寿生活の実践手ノート帳の欄に記入していくだけで埋まっていくので、文章を考える煩わしさもない。
7日分が終わると、週の実践記録を確認する「まとめ」の欄があり、1週間の取り組みを客観的に評価できる。巻末には体重の推移を折れ線グラフで書き込む欄があるので、中長期的な努力の成果が一目で見られて面白い。つまり本著の最大の売りは、楽しみながら完成させていく「遊び心」なのだ。
日記形式だが、毎日書き込まなければならないわけでもない。白澤氏が提唱するボケ予防法の1つに「2日前の日記を書く」というものがある。一昨日何をしたか。誰と会って何を食べたのか―を思い出しながら書き込んでいく作業は、記憶力を高める脳のトレーニングになるというのだ。
「しなければならない」という縛りを取り払うことで、書き込むことへのストレスをなくし、うっかり書き忘れた人への逃げ道まで用意しているのだから恐れ入る。中には「わざと2日遅れで記入する」といった難度の高いワザに挑戦する人も出てくるだろう。
101日目を記入すると完成だ。普通、手帳の単位は1年間だが、あえて101日にしたところにも、著者の思惑がある。101日というと3カ月半。本著の勧める健康生活を始めると、おおむね3カ月あたりで心身に何らかの変化が現れるだろうと著者は予測する。糖尿病に代表される生活習慣病への取り組みの多くは、3カ月を「1クール」とし、1つの目安としているからだ。
1冊を書き終える頃に何らかの変化、すなわち「成果」が実感できるようになればしめたもの。それは健康法が習慣となっていることを示唆し、そこから先ドロップアウトする危険性は低くなる。この手帳も卒業だ。
もちろん、卒業の自信がなければ「2クール目」に入ればいい。あくまで「100歳までボケない」ことが目的の手帳なのだから、使い方は人それぞれだ。
今回、本稿を書くにあたって、手帳にも「書評」があることを初めて知った。しかし、本著は考えようによっては小説以上に面白い「読み物」といえるのかもしれない。手帳や日記を単なる備忘録と考えてしまうと味気ないが、1冊の読み物としてみれば、当人にとっては非常に面白い書物となるからだ。毎日記入すれば、毎日2ページずつ「読み物」が出来上がっていく。1週間、1カ月と「峠」を超えるたびに達成感が得られ、それがまた精神的側面から健康を後押ししてくれるのだ。
最後に医療ジャーナリストらしい助言の1つも述べておく。もし本著に記録を書き込んでいる間に医療機関を受診することがあれば、治療内容や検査結果、処方薬などを克明に記入しておくことをお勧めする。基本的な健康情報が網羅されているところに、詳細な医療データが加わることで、万一の手術や緊急入院時などに非常に役立つ第1級の医療情報となるからだ。
そう考えると、やはり1冊で終わらせるのはもったいない気がしてくる。
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