- 2011.03.20
- 書評
君たちは、絶対に成功する
文:岩瀬 大輔 (ライフネット生命保険株式会社代表取締役副社長)
『ネットで生保を売ろう!――’76生まれ、ライフネット生命を立ち上げる』 (岩瀬大輔 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
もっとも、ゼロから新しい生命保険会社を立ち上げるのは決して容易ではなかった。
まずは、資金。法律上求められている保険会社の最低資本金は10億円だが、「相場は100億円」と言われていた。実績もないベンチャー企業が事業計画書とプレゼンテーションだけで集める金額としては、前例がなかった。
次に、免許。銀行や保険会社を新たに設立するには、内閣総理大臣の認可が必要だが、戦後に設立された生命保険会社は外資系か損保会社の子会社であり、そのいずれをも親会社に持たない「独立系」の生命保険会社が最後に認可を取得して設立されたのは1934年のことだった。
そして、人材。営業開始には約40名の業務精通者を集めることが求められたが、資本力も無く、許認可が出るかも定かでない準備会社への転職を説得するには、大きな夢を語り続けるしかなかった。
更に、情報。保険会社の後ろ盾がない我々には、会社の基幹となる保険商品の数理データやITのインフラがなかった。
「凸凹コンビ」とも称された我々は約2年間、必死に走り回った。結果、三井物産、新生銀行、セブン&アイを核とした一流企業が、総額132億円の出資を決めてくれた。
そして、メディアを通じて我々の挑戦が報じられると、一人また一人と、理念に賛同した仲間が集まってきた。保険会社出身はもちろん、旧来の常識にとらわれないフレッシュな感覚を持つ人材が加わった。その代表格は、マーケティングの責任者に就いた、スターバックス コーヒー ジャパンの元広報担当役員、中田華寿子である。
保険の煩わしい勧誘から解放され、「人生で二番目に大きい買い物」と言われる保険料を大幅に節約できるなら、加入者は殺到するに違いない。開業前はそんな甘い考えをもったものだが、実際にスタートしてみると、ビジネスの厳しさを痛いほど思い知らされる。どれほどいい商品でも、知られていなければ意味がない。知られても、保険は長期の商品なので、会社の長期安定を信じられなければ加入してもらえない。
どのベンチャー企業もそうであるように、我々も軌道に乗るまで、何度となく困難に直面した。そのときは、複数のベンチャー起業経験を持つ、先輩アントレプレナーから開業前にかけられた言葉を自分たちに言い聞かせた。
「君たちは、絶対に成功する。なぜなら、『応援したくなる何か』を持っているから」
成功するベンチャーは一人、二人の優秀な人間が作るのではない。理念と情熱を共有する仲間と、それに共感する無数の応援者によって育まれていくのだ。
本書は僕が投資家に出会った5年前から、ライフネット生命が生まれ、成長していく過程を振り返ったものである。
30歳のハーバードMBAと58歳の日本生命OBとの偶然の出会いが必然であるドラマ。大きく強い者に小さい者が無謀にも挑戦するダビデとゴリアテの構図。立ちはだかる苦難と、仲間が力を合わせてそれを乗り越えようとする冒険――日本にも明るい将来を信じて、社会を変えようと挑戦している人たちがいる。
そんなことを知ってもらうために、一人でも多くの方に手に取って頂きたい。
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