「巨匠」と呼ばれる映画監督のなかでも、これほど長きにわたって第一線で撮り続けた人はいない。大正四年(一九一五年)生まれ。市川儀一という本名を、成人後に自ら「崑」と改名。漫画家の清水崑のファンだったからともいわれる。ディズニー映画に憧れ、アニメーション作家としてスタートした。やがて実写に転じ、戦前から戦後にわたり、実にあらゆるジャンルの映画を手がけた。
昭和四十年(一九六五年)の「東京オリンピック」では、ドキュメンタリー映画に斬新な「演出」を持ち込み、一部に物議を醸すが、観客からは圧倒的支持を得る。一九七〇年代には、横溝正史ブームの中、「犬神家の一族」にはじまるシリーズを次々に製作、怪奇趣味よりも理知的な謎解きと人間ドラマを前面に出して成功した。つねに芸術性と娯楽性を両立させ、名作とされる作品は数知れない。
くわえ煙草に便利だからと自ら前歯を一本抜き、撮影中でも取材中でも煙草を口から離すことがなかった。編集中に光をかざして見ていたフィルムを焦がしてしまったこともあるという。それでも長寿を保ち、平成二十年(二〇〇八)年に九十二歳で没する直前まで、メガホンを握り続けた。
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