仙台にあるトヨタの自動車販売店でトップの営業成績を誇っていた丹野智文さんは、4年前、39歳でアルツハイマーと診断されます。怒り、落胆、後悔の念にとらわれ、うつ状態になったこともありました。
現在では当時と比べて記憶の状態は悪くなっていますが、会社勤めも続いていて、採用活動も担当すれば、車の販売をすることも。家族仲良く笑顔で暮らせています。それどころか、アルツハイマーの正しい認識を広めるために各地の講演に招かれ、6月はスコットランドにも招かれています。
認知症は人生の終わりではない!
最初に違和感を覚えたのは8年前。ストレスが原因かと思っていたのですが、症状は徐々に悪化。アルツハイマーという診断に「人生は終わった」「収入が途絶えたら家族はどうなるんだろう」と、ショックを受けます。
病気のことを娘たちにどう伝えていいのか、思い悩む場面は涙なしには読めません。また、明るく笑顔を絶やさない奥さんも素晴らしい。会社帰りに自宅近くのバス停で降りるのを忘れた丹野さんを、ガーデニングをやっていた奥さんが笑いながら見送るシーンは、素敵な恋愛映画のようでもあります。
丹野さんが笑顔で暮らせている理由は、家族の会で同じ境遇の人と知り合えたこと、自分の病気を隠さず周りの人の理解を得たことなど、いくつかあります。
感心するのは、記憶を無くしても仕事が出来るように工夫する情報の整理術。ノートに細かく記録したり、パソコンのフォルダを分かりやすく整理したり。
また、スマートフォンという文明の利器も、大きな支えになっています。スケジュール管理は、LINEでの連絡やアラーム設定を活用。講演会場や飲み会への道案内も、もちろんスマホという具合に。
本書は多くの人に前を向いて生きる力と、認知症への正しい理解を与えてくれるはずです。