書評

剣道女子たちが迎える人生の岐路

文: 「週刊文春」編集部

『武士道ジェネレーション』 (誉田哲也 著)

16歳の香織と早苗の出会いから描く『武士道シックスティーン』、早苗の転校で離ればなれに新しいことを学んでゆく『~セブンティーン』、ついに全国大会で決戦のときを迎える『~エイティーン』。第4弾となる今作では早苗の大学での学びと結婚、そして香織の通う桐谷道場閉鎖の危機と2人の人生の岐路を描く。 文藝春秋 1500円+税

 剣道に打ち込む香織と早苗の成長を描く、誉田哲也さんの〈武士道シリーズ〉最新作。2人が16歳の『武士道シックスティーン』に始まり、17、18と続いたが、6年ぶりの今作は年齢ではなく、『武士道ジェネレーション』。世代と銘打たれた通り、受け継ぎ、伝えることが大きなテーマだ。

「大学進学後、早苗は結婚し、香織は町道場の後継問題に関わる――というところまで、実は前作の段階で決まっていました。でも、小説に必要なテーマが見えなくて。前作に“守破離”という言葉が出てきます。まず師の型を守り、次に破って自分の型を作る、その上で初めて型から自由になれる、という考え方です。その守破離の後に来るものは“伝える”ではないか。そうテーマが定まると、書き始めることができました」

 宮本武蔵を師と仰ぐ“剣道馬鹿”の香織。“お気楽不動心”で芯は強い早苗。剣道も性格も異なる2人は、それゆえに互いを認め、補い合ってきた。今作冒頭はなんと、早苗の結婚式に出席する香織の語りで始まる。お相手は香織の兄弟子・充也。シリーズ読者には意外でもあり、改めて振り返れば納得の展開でもある。

「これもエイティーンの頃から決まっていたことなので、今回やっと伏線を回収できたなという気持ちです」

 怪我のために剣道を諦めた早苗は心機一転、大学で勉学に励む。あんなに熱心だったのに、未練がなさそうに思えるが……。

「ひとつのことが終わっても、それで全部が終わりじゃない、ということを書きたかった。もともと早苗は日舞の代わりに剣道を始めたような子。怪我はつらくても、新しい道を見つけられると思いました。僕自身も30まで音楽でプロを目指していて、その夢は諦めたけど今こうして作家としてやれているという経験からくる実感でもあります」

 一方、香織が通う町道場は閉鎖の危機を迎える。老身の師匠に師範代として認めてもらうため、香織は剣道ひいては武士道の根底にも通じるような、秘密の特訓を受けることとなる。

「香織が直面するのは、剣道が競技化されていく中で現実の格闘の強さとかけ離れていくというジレンマです。エイティーンで書いた道場の裏歴史まで含めて、香織が何を受け継ぎ、どう次世代に伝えていくか。ラストシーンはその象徴になりましたね」

 大人になり一度は別れた2人の道が、剣道を通じてまた重なり続いてゆく結びに、胸が熱くなる。

ほんだてつや/1969年東京都生まれ。2002年『妖の華』で作家デビュー。03年『アクセス』でホラーサスペンス大賞特別賞受賞。『ストロベリーナイト』『ジウ』など警察小説で注目される一方、『武士道シックスティーン』など青春小説でも人気を集める。