はじめに
瀬戸内寂聴現代語訳『源氏物語』(全十巻)の刊行が始まったのは、一九九六年(平成八年)十二月からであった。幸い好評で、様々なところで取りあげられ評判になった。
翌一九九七年(平成九年)にはNHKの教育テレビ「人間大学」で「源氏物語の女性たち」を全十二回放映してくれることになった。
四月から六月まで、三カ月間十二回、私ひとりで『源氏物語』を語らせてもらうことになった。私の『源氏物語』が続々刊行されている折柄、評判の高い番組に取りあげてもらったのは何より有難かった。ただしテキストを猛スピードで二百枚余り書き下ろしたのには、さすがに疲労困憊した。撮影は、源氏物語のゆかりの舞台に出かけていって、語るという方法なので、想像以上に大変だった。スタッフの方々が親身になってくれ、苦楽を共にしてくれたのが身にしみて有難かった。
この番組は評判がよく、面目をほどこした。その時のテキストを、源氏物語千年紀の二〇〇八年に、改装して出してもらえたのは、幸運なことである。
この『源氏物語の女君たち』を読み進めていただければ、『源氏物語』の面白さが倍加されるだろう。