
- 2019.03.26
- 書評
ラテンアメリカとキューバ革命の壮大な叙事詩に仕掛けられた華麗なトリック
文:八木啓代 (音楽家、作家)
『ゲバラ漂流 ポーラースター 2』(海堂 尊 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
そんなことを考えながら、中南米史の勉強も兼ねて、どこが事実でどこが創作なのかを考えてみるのも、また一興かもしれない。
それにしても、海堂氏の流麗な筆で描かれた、それぞれの著名人たちのキャラの立ちっぷりときたら!
本文中で、ゲバラ青年が、ある重要な登場人物について「見てきたような嘘をつく」だの「息をするように嘘をつく」と評するシーンがあるが、誰よりも、息をするように見てきたような嘘をついているのは、作者の方だというべきだろう。
とはいえ、それが小説の小説たる所以。素晴らしい作家とは、天才的な嘘つきでなければならない。
そして、その巧みで鮮やかな嘘ゆえに、かえって、私たちは、ラテンアメリカ史の、キューバ革命史の深淵を覗き、バイブレーションを感じる愉悦に浸ることができるのだ。
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