ギリギリの生活の中で……「作家」の才能に目覚めた瞬間

作家の書き出し

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ギリギリの生活の中で……「作家」の才能に目覚めた瞬間

インタビュー・構成: 瀧井 朝世

深緑野分インタビュー(後編)

――ストレートティーとは、どういう意味で?

深緑 「午後ティー」の期間限定のピーチティーとかオレンジティーとかじゃなくて、ただのストレートティー、みたいな。

――ああ、飽きられずにずっと飲み継がれているじゃないですか。

深緑 マネージャーも「だからいいんじゃない?」ってなぐさめてくれました(笑)。でもあんまり市場とか需要に応えられないのがちょっとコンプレックスというか。「こういうの書いてください」と言われて臨機応変に対応できる作家さんもいるし、ジャンルに特化している人もいる。私はそうじゃなくて、そこに話があるから、そこに物語が見えるから書くだけなんです。だから感想も賛否両論割れやすい。「それはパワーがあるって意味でいいじゃないか」と励まされます(笑)。

――私を含め、そういう物語を読みたい人もたくさんいます! 深緑さんは小さい頃から、お姉さんと“ごっこ遊び”をするなどして物語を作っていたそうですね。

深緑 そうですね。ごっこ遊びもそうだし、「ここに妖精がいて」とか、日々カジュアルにお話を作っていました。あとは、夜見る夢にまでしっかり起承転結があって。夢の中で黒ずくめのふたり組の男に追いかけられて、エレベーターに乗って2階に上がって「ふう、逃げられた」とほっとしたと思ったらチーンと扉が開いてそこにふたり組がいる、なんていう恐怖演出までされていたり。

 小さい頃、家で親と一緒に最初の『ゴジラ』を観て、怖くてギャン泣きしたんです。その後無意識のうちに、映画で使われていたショット以外のゴジラの怖い登場の仕方を頭の中で考え続けていて、それが夢の中に出てきて「あーっ」と言いながら起きたりしていました。だから寝るのが嫌でした。夢を見ちゃうから。

別冊文藝春秋 電子版35号(2021年1月号)文藝春秋・編

発売日:2020年12月18日