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「自分と重ね苦しくなることも」「周りなんて見ないフリして走ってきた大人に刺さる物語」額賀澪さんデビュー10周年記念作『天才望遠鏡』に胸を抉られる大人たちが続々!

「自分と重ね苦しくなることも」「周りなんて見ないフリして走ってきた大人に刺さる物語」額賀澪さんデビュー10周年記念作『天才望遠鏡』に胸を抉られる大人たちが続々!

『天才望遠鏡』(額賀 澪)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『天才望遠鏡』(額賀 澪)

 24歳のときに『屋上のウインドノーツ』でデビューして以来、青春や音楽、スポーツにお仕事と幅広いジャンルの作品を生み出してきた額賀澪さん。デビュー10周年の節目に選んだテーマが「天才」です。史上最年少でプロ入りした中学生棋士、タピオカミルクティーの味もマカロンの味も知らない、かつての「氷上の妖精」、気がつかぬままに抜群の歌声を持ち、オーディションを駆け上がる天才中学生……。

 5つの天才とその姿をそばで“観測”していた者たちを描いた連作短編集に、書店員さんからの熱い感想がたくさん届きました。(第1回/全4回予定)


ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん
頂点に立っている輝きと一線から離れ、引退の二文字も浮かびあがってくるその退く前の一瞬の煌めき、種類は違うかもしれないが、去る前の煌めきは、その人の万感の思いをのせて、どこにもない美しさがあるんだと思う。その美しさを見事にこの作品は掬い上げている。そして、その一握りの天才の側で見守る人の心を咀嚼できない痛みと寄り添う愛が心に響き続けた。納得しようとしながら、天才の側にいる人も輝いていた。

紀伊國屋書店さいたま新都心店 大森輝美さん
やられました。胸が痛いくらい心に刺さった。特に「星原の観測者」は同じ業界にいる者としては色々理解してしまうのが、逆に辛い。が、好きな一編だ。友情に涙した。
勝手ながら、自分の現状と各編の登場人物たちを重ねるシーンがあり、苦しくなることもしばしば。誰もが天才ではないし、みんなが努力できるわけではない。後悔ばかりの人生だけど、もしかしたら誰かが見ている、と希望をもたせてくれた。そうか、だからタイトルは『天才望遠鏡』なのかなと思った。

正和堂書店 猪田みゆきさん
天才たちの天才としての才能が終わる間際に立ち会う人、競走馬の第二の生と共に立ち上がろうとする人、作家仲間の死を悼む天才と呼ばれる作家。
様々な天才に纏わる話が書かれています。天才が一生天才でいる保証なんてない。
凡人だと信じ込んでいた。あるいは、環境によって信じ込まざるを得ない人がある日天才と認められる瞬間がある。
天才とはなんて、散り際の線香花火のように眩しくて、他人の願望を一身に押し付けられつつも懸命に生きる存在なのか。天才という存在の複雑さを、他人の無責任さを、考えさせられる作品です。

くまざわ書店西新井店 中沢雅さん
〈「将来の夢」を思い出せないすべての大人たちへ〉という帯文がこの作品たちの魅力を一言で伝えてくれていて読む前からそわそわしてました。
短編で読みやすかったです。それでいて、少しずつ他の話と繋がる部分を感じるたびに、物語の後も誰かが彼ら彼女らを観測しているんだなと嬉しくなりました。物語のその先が少しだけ垣間見れてありがたかったです。
明るいその後を想像させてもらえる終わりに、無我夢中で周りなんて見ないフリして走ってきた大人に刺さる物語たちだなと思いました。
誰かを観測してばかりだったけど、もしかしたらそんな周りを見てもがいている自分を誰かが観測してくれていたかもしれない。そう思わせてくれる一冊でした。
登場人物たちが周りの人たちも含めてみんな個性豊かで誰を観測しても面白いんだろうし、誰かに自分が似ているとか、こうなりたかったとか、そう考えながら読んでました。
「星の盤側」多々良があまりにも生々しい人間で現実に本当に存在しそうだなと思うくらいに、作られてない人物で読み始めから好きでした。このあとの作品たちにも良いポジションに彼がいることで、没入感が違います。座間との対談楽しみにしてます。
「妖精の引き際」律に共感する大人は多いはず。わたしがそうです。他人が見せてくれる夢を掴んで離せない。近い人であればあるほど。それを分かると言ってくれる多々良……救ってくれてありがとう。
「エスペランサの子供たち」子供の線引きってどこからだろう。エスペランサに通う子供たちも、その子供たちをどうにかしたいとボランティアに行く彼女たちも、やり直したいけど諦めている同類で、同じ痛みを分け合うことでなんとか耐えてるような気がして苦しかった。だけど、ナナオは偽善とかそういう自分の持つ後悔とか全部認めて「むかつく」と言い放ってくれたのが良かったです。簡単なことじゃないしきっと叶わないし、たられば話だけれど、願わくば彩香がナナオから貰ったリボンの付いたパンプスを履き、自分が歩きたい道を歩けますように。
「カケルの蹄音」エマの真っ直ぐな性格、好きすぎます。「図に乗るな」と言いながらちゃんと面倒を見てくれて的確なことを伝えてくれる、好きすぎます。翔琉と同じような迷子になっている人に読んでほしいしエマみたいな人に出会いたくなる。翔琉とカケルの二人のその後が次の話で垣間見れてありがたかった。
「星原の観測者」一番好きです。釘宮と星原の会話から展開が全く読めなくて、ただただ読み進めて、読み終えたら本当にこのお話が好きだという感想しか残ってません。
「ざまあみろ」でいいんだよ一峰。多々良がここでも良い位置に存在していて良すぎる。
どの話もとても面白かったです。まさに大人の青春小説で、昔は良かったと言いがちな人にも読んでほしい。天才だと言われていた人も親ガチャ当たりだった人もハズレだった人も須く刺さります。

単行本
天才望遠鏡
額賀澪

定価:1,760円(税込)発売日:2025年07月11日

電子書籍
天才望遠鏡
額賀澪

発売日:2025年07月11日

プレゼント
  • 『妖の絆』誉田哲也・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2025/07/11~2025/07/18
    賞品 『妖の絆』誉田哲也・著 5名様

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