担当編集者より

　本を読む楽しみとはなんでしょうか？　知らなかった世界の知見を得る。これからの人生の指針となるような示唆に富んだ物語、格言に浸る。そうした“タメになる”ことも、読書の大きな目的のひとつだろうと思います。
　ただ一方で、朝から晩まで一生懸命働いき、家に帰ってさらに“タメになる”ことのために本に向かうというのは、なかなか骨の折れることではないでしょうか。
　オール讀物新人賞受賞作の表題作を含むこの『首ざむらい』は、江戸時代を舞台に、不思議でゆる～い怪異譚４作が収録されています。前述の“タメになる”か、“ならない”かで言えば、“ならない”のかもしれません。
　しかし、選考委員諸氏が「楽しかった」と言うように、ページをめくれば思わず、ニヤリ、クスリ、ホロリとさせられること請け合いです。寝る前に「あぁ、面白かった」と本を閉じていただき、「また、明日から頑張ろう」と思って目を閉じていただければ、これ幸い。
　ただただ楽しく、チャーミング（＆時々すっとぼけ）な時代小説の誕生です。