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話題のオール讀物新人賞受賞作『首ざむらい』。その類いまれな魅力とは?

話題のオール讀物新人賞受賞作『首ざむらい』。その類いまれな魅力とは?

『首ざむらい 世にも快奇な江戸物語』(由原かのん)


ジャンル : #歴史・時代小説

第99回のオール讀物新人賞を受賞し、2022年末にデビューした新人作家・由原かのんさんの『首ざむらい 世にも快奇な江戸物語』が、各紙誌で取り上げられ話題です。新人賞で当時選考にあたった有栖川有栖さん、村山由佳さん、乃南アサさんによる、受賞作「首侍」への選評(抜粋)を改めて公開し、その魅力に迫りました。


『首ざむらい 世にも快奇な江戸物語』(由原 かのん)
有栖川有栖さん

『首侍』は、首だけになって浮遊する侍と主人公が珍道中を繰り広げ、大坂の陣で活劇を演じるユーモア・時代・伝奇小説。「物語に引き込む手際もいいし、締め括り方も洒落(しゃれ)ているし、全編にわたって楽しい。これが受賞作でいいではないか。自分は好きだけれど、ナンセンスが過ぎると評されるかな。終盤に突飛な設定の追い打ちがあるのがどう評価されるかな。こういう小説の世界に遊びたい読者もたくさんいるはず。この作者が他にどんなものを書くのかとても興味がある。次々に面白い物語を懐から取り出してくれそう」と思いつつ選考会に臨んだら、激戦を勝ち上がって頂点に立った。まことにめでたい(扇子を開く)。「ここはちょっと……」と他の委員から疑問が呈された箇所もあるが、私は「ごもっともです。だけど、この小説が面白かったという感想は変わりません」と非分析的に応え、諸氏の温かい微苦笑を買ったことを記して、この選評の結びとしたい。

村山由佳さん

 とぼけているようでいて考え抜かれた小説だった。お茶目な生首と旅をするなど、いきなり聞かされれば馬鹿ばかしくて話についていけなくなるところだが、プロローグにあたる部分であらかじめ「法螺(ほら)話にしか聞こえないだろう」とあるおかげで、あとから本当に首が喋りだしても違和感を覚えずに済む。張り巡らされた伏線もそれぞれ効果的に活きているし、一度持ち出した材料は(たとえば旅の途中でもらった組紐が後に大事な刀の提緒(さげお)代わりになったり、戦の場面では首にうらめしげな顔をさせて別の用途に使ったりといった具合に)すべて無駄なく使い切っている。何より、この首がじつにいい。私もひとつ欲しくなるくらいに魅力的で可愛い。エピローグ部分の大風呂敷の畳み方まで含めて、いやはや大いに愉しませてもらった。

 突出したセンスでは『エイプリル』。重厚さでは『ひとぼしごろ』。それらを抑えての『首侍』には、達者で心地よい軽みがあった。要するに、たいへん面白かったのだ。

 付け加えるなら、自身の作りあげる世界の隅々にまで目配りが行き届いているという点で、安心して作者を信用することができた。

 信用はそのまま、次に何を書いてくれるだろうという期待に繋がる。

 由原かのんさん、おめでとうございます。

乃南アサさん

『首侍』は大坂夏の陣の時代を背景に二十歳になる主人公が江戸から大坂に向かう途中で「首」と出会い、共に旅をするという、道中記の形を取りながらの奇譚。

 実は、本作には欠点や疑問点がたくさんある。私自身、たとえば主人公の年齢にしては母親の台詞(せりふ)が子ども扱いし過ぎではないか、武士の妻だった母親が「垢擦り女」になる必然性はあったのか、何よりもラストの「かぐや姫」的存在という設定はいかがなものか、などといった点が引っかかった。他の選考委員からも様々な疑問が提示されつつ、「でも『首』が出てくる話なんだから」、そこが面白かったのだから、細かいことにこだわっても仕方がないよね、という、何とも和(なご)やかで不思議な空気が出来上がった。要するに、無条件に楽しんで読むことが出来たのだ。「首」はそれほど魅力的に描けており、(首のくせに)生き生きとしている。その「首」のパワーが、そのまま作品の持つ力となり、選考会が終わった後もひとしきり「首」の話で楽しむことが出来た。「ああ、面白かったね」で終われるというのは、本作の何よりの魅力であり、強みだった。

 ただし、冒頭に指摘したように、実は問題点はたくさんある。もっと工夫のしようもあっただろう。次に、どんな方法で楽しませていただけるかを期待したい。

単行本
首ざむらい
世にも快奇な江戸物語
由原かのん

定価:1,980円(税込)発売日:2022年11月25日

電子書籍
首ざむらい
世にも快奇な江戸物語
由原かのん

発売日:2022年11月25日

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