〈森の暮らしは自然の恩恵に満ちている――作家・小川糸のとっておきの話〉から続く
『いとしきもの 森、山小屋、暮らしの道具』では、森の山小屋の中の写真も公開。とりわけ注目度の高い小川糸さんの知恵と工夫が詰まったキッチンについて、お話を伺いました。
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ベルリンからやって来た大きなデスク
――ダイニングキッチンのお写真ですね。手前の黒い大きなデスクは何に使っているものですか?
小川 これはベルリンから持ってきました。ベルリンでは仕事をするときのデスクとして使っていたんですけれども、シングルベッドほどの大きさなので、日本の住まいのスペースには幅を結構とられてしまって、置き場がなくて困っていたんです。
そうしたら山小屋をつくるときに、本当は作業台を新しくつくる予定だったのですが、予算がオーバーということで、あの大きいデスクを置いたらちょうど良いかな、と思って置いてみました。そうしたら、ぴったりで!
このテーブルで仕事をすることもあるし、あとは料理で粉を混ぜたり、後ろのキッチンで鍋を煮込んだりしながらここで本を読んだり、そんな感じでいろいろな風に使っています。
――なんと引き出しがデスクの下に付いているんですね。これは収納的にすごく便利ですね。
小川 そうですね。ここはフォークやナイフ、お薬を入れています。引き出しがある家具は本当に使いやすくて、私はなるべく家具を選ぶときにも引き出しがあるかどうかで決めています。
キッチンづくりでこだわった所
――その奥がキッチンですが、キッチンづくりでこだわった部分というのはどういったところでしょうか。
小川 自分の使いやすい高さ、サイズ感にこだわりました。あと収納という点からいうと、物を引き出しにしまえばきっちり見えるけど、引き出しを開ければ中はざっくりとおおざっぱに収納するという、メリハリを付けるのが自分にとってはすごく納得ができるやりかたなので、そうするように心がけています。
――この写真にはうつっていないのですが、このキッチンの右奥に、隠れた大容量の収納棚があるんですよね?(編集部注・『いとしきもの』には収納棚の写真を掲載)
小川 冷蔵庫部屋ですね。私が音にけっこう敏感なので、仕事をしていて冷蔵庫の音が聴こえてくると集中力が途切れてしまう。ですから、冷蔵庫部屋とキッチンの境い目にある扉をしめることで冷蔵庫が隔離されるような状態にして、音が聴こえてこないつくりに。そして、この小さな冷蔵庫部屋に、器などたくさん収納できる棚を設置しました。
――キッチンシンクの下にカゴがあるのですが、収納されるときにかごを多用されているんですね。
小川 この写真左下のかごは、ゴミ箱として使っているんです。新しいごみ箱を買うよりも、なにか代用でまかなえるものは使いたいなというもったいない精神で、かごを使っています。
山小屋でつくる料理
――美味しそうなラーメン!
小川 基本的にまず、夜の外食はほぼしない生活になりまして、これはインスタントラーメンなんですけれども、本当に夜は簡単なものをささっと食べるという感じです。
――インスタントラーメンも素材にこだわっていますね?
小川 はい。添加物を一切使わない「純正ラーメン」を使っていて、地元のハムを載せたラーメンを定番でよく作ります。
――標高が高いと、お湯を沸かすときはどんな感じですか?
小川 沸騰はするんですが、あまりごはんが美味しく炊けないんですね。沸点が低いので、おいしさが引き出される前に炊くのがなんか終わっちゃう、みたいな(笑)。同じお米を使っているはずなのに、なんでおいしく炊けないのかな、とずっと山小屋に住み始めてから疑問だったんですが、沸点の違いが原因と聞いてから、山小屋より標高の低い里の野良小屋で炊いて、それを山小屋に持っていって食べています。車で行き来できる距離なので。
――よく召し上がりますか、コーヒー?
小川 はい。朝と昼のごはんを一緒にしているので、だいたい10時とか11時くらいに食べるんですけれども、食後にコーヒーを飲んでいます。地元のコーヒー屋さんで買ってくるお豆を使っています。
――コーヒーを入れるコツはありますか?
小川 そうですねぇ。すごく適当です、わたしは。感覚に任せています。
――このスイーツは撮影が終わった後に頂いたんですが、すごく優しい味で美味しかったです。作り方、教えていただけますか?
小川 これは、豆花(トウファ)。お豆腐と牛乳で作る台湾のデザートですね。豆腐をすり鉢ですってなめらかにして、そこに牛乳を混ぜて鍋で加熱しゼラチンで固めています。ここは花豆が美味しい地域なので、お豆を炊いたのを添えてメープルシロップをかけました。
――基本的に地産地消で地元で買われた食材を使っていますね?
小川 はい。道の駅とか、産直とか、地元の野菜がほんとに美味しいので、ちょっと遠出するときなんかも、地元の食材を持っていって食べたいなと思うほどです。
(第5回に続く)





