第70回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書となり、2024年秋に窪田正孝さん主演のNHKドラマ化で大きな注目を集めた、伊与原新さんの青春小説『宙わたる教室』。さまざまな背景を持つ生徒が集う、東新宿高校定時制科学部が舞台となり「泣ける青春科学小説」として絶賛されました。

 そして6年後、あの伝説の科学部が復活。前作を上回ると評判の感動作が『コズミック・ガール』です。科学に触れる喜びにあふれた、直木賞作家・伊与原新さんの傑作長編を読んだ、全国の教員・司書の先生方の感想をご紹介します!(→高校生の感想はこちらへ

伊予原新『コズミック・ガール』

東京都立三鷹中等教育学校 平井孝明先生

 毒親、ひとり親家庭、病気がち、外国籍といった自分ではどうにもできない背景を持ち、何かしらの困難をかかえている生徒が集まる夜間定時制高校の様子がとってもリアルに描かれていました。

 Jamiroquaiの“Cosmic Girl”の歌詞に、「別の銀河からやってきたコズミックガールが僕の心を無重力状態にさせてくれる」という部分がありますが、本作の主人公佐那=Cosmic Girlもまさしくこの小説のエネルギーで、級友たちの“無気力・無関心”という空気を取り払っていく姿を夢中になって追いかけました。

 読書はタイパが悪いとよく耳にしますが、ショート動画を何本見てもこの深い余韻は味わえません。この本を推したい理系志望の生徒や同じ職場で働く職員の顔が浮かぶので、今すぐおすすめしてきます!

向上高等学校 谷川拓矢先生

 自分自身と折り合いがつかない。他者と融和的な関係を築けない。だが、そうした者同士だからこそ、かえって呼び合うということがある。そこで得られた「関係」と「学び」の中で、自らの欠落と痛みの意味を知り、自分というものを少しずつ、ほんとうに少しずつ受け入れていく。そんな成熟への道筋を、そっと教えてくれる物語だ。そしてまた、青年ばかりでなく、大人もまたその道筋を歩む者なのだ、ということも……。

東京都立立川国際中等教育学校附属小学校 杉山和芳先生

 登場人物は6年前とは異なりますが、科学部が試行錯誤をし、時には失敗を重ねながらも力を合わせて乗り越えていく姿に感動します。前作『宙わたる教室』では藤竹先生という大きな存在があり、子どもたちを導いていました。今回は子どもたち自身が自律的に前に進んでいく点が異なります。コンテストに向けて研究を進めていく中で成長していく子どもたちの姿が輝いて見えます。読者も、副校長の百瀬先生の「いくつになっても、教え子に教えられてばかりですよ」という言葉に深く共感することでしょう。

 物語の最後、コンテストでは最優秀賞になれなかったが、アメリカに行くことになる場面で、ようやく前作の主人公、藤竹先生のその後が明かされます。藤竹先生も挫折を乗り越え、新たな道を進んでいました。アメリカのISSAの会場で、飯星佐那と藤竹先生との間でどのような会話がなされるのか、小説には書かれていないが、想像するのが楽しみです。

 この物語を通して科学を好きな人が増えてくれることを願っています。また、生徒たちには科学部のみんなの姿を通して、探究学習の楽しみを理解してくれるといいなと思っています。

国府台女子学院高等部 今関加奈恵先生

 前作に引き続き、熱い思いが詰まったキラキラの青春小説でした。部員たちは最初から最後まで自分たち自身で決めた道を純粋に進んでいて、その姿がとても美しく、勇気づけられました。

 仕事柄、どうしても子どもを支える大人目線でストーリーを追ってしまったのですが、里仲先生や藤竹先生のように、私自身も自分の道を少しずつ切り開いていこうと思いました。本当に、子どもの「やってみたい」「好きなことを追求したい」というパワーは強大ですね。そのパワーに突き動かされ、私も挑戦し続けていこうと思います。

伊与原新さんからは各学校に感想に御礼の色紙も贈られた