2026年9月9日、都内で映画『さとこはいつも』(9月18日公開)舞台挨拶付き東京先行上映会が開催されました。登壇したのは、3人の「さとこ」を演じた有村架純、石田ひかり、姫野花春に加え、青木柚、吉田羊、筒井道隆の総勢6名のキャストたち。300人の中から発掘された新人女優・姫野の魅力や実に33年ぶりの共演となった石田&筒井コンビの秘話などが明かされ、会場は熱気に包まれました。そんなイベントのレポートをお届けします!(司会は奥浜レイラ、以下――)

――:今日は上映後の舞台挨拶ということもあり、まだまだ作品の余韻の残る中でキャストのみなさんをお呼びしたいと思います! 本日は最後までどうぞよろしくお願いいたします。

吉田羊(以下、吉田):ネタバレ大アリで、大いに楽しみたいと思います。

――:ぜひお願いします!(笑)

 みなさんに観ていただいた通り、本作は3人の「さとこ」という女性が自分の物語を書いていくなかで、少しずつそれぞれの人生が交差していくお話です。まずは15歳、中学3年生の中井聡子さんと彼女が物語を書き始めることを後押しする、国語教師の寺尾先生が描かれます。中井聡子を演じられた姫野さんは、今作が映画初出演にして初主演。演じるうえで意識されたのはどのようなところでしょうか?

姫野花春(以下、姫野):何よりも大事にしていたのは、何かを意識するというよりも先に、目の前で起きている出来事や、寺尾先生をはじめ聡子が出会う人との間に生まれたものに反応することでした。

 初めてで分からないことだらけではあったのですが、監督からもたくさんの言葉をいただいたので、それを支えに本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。

◆300人の中から選ばれた逸材

――:姫野さんはなんと、オーディションで300人の中から選ばれました。有村さん、世間に姫野さんが見つかるまであと少しですね。

有村架純(以下、有村):本当に。あと1週間です。

――:吉田さんは聡子の背中を押すミステリアスな教師・寺尾先生を演じられていますが、この人物をどのように捉えていらっしゃいましたか?

吉田:そうですね……寺尾先生は表情に乏しく、感情のありかが分からないような人ではあるんですけれども、こと文章や物語に関しては熱い思いがある。だからこそ、聡子の才能に触れたときに本当に驚いて、この無自覚の才能をなんとか世に送り出したい、そしてさらにその先に生まれる彼女の物語を読みたいと感じたのだと思うんですよね。いつか、彼女と同じ細胞レベルで“作家談義”をしたいなんて想いもあったのかなと想像しながら演じました。

 というのも、寺尾先生の裏設定として、実は作家志望なんですよね。で、すでに本を1冊出していて、映画の中では2冊目の構想をずっと考えているという設定なんです。それが『王将』というタイトルなのですが、実は事前に監督がこの『王将』のプロットを書いて渡してくださったんですよ。だから花壇のシーンで駒の動き方をぶつぶつ呟いていたり、生徒たちに課題をやらせている間に目をつぶって考え込むシーンなんかは、『王将』について考えている様子をお芝居に反映させました。

――:吉田さんのシーンのほとんどが姫野さんとご一緒されていたかと思うのですが、「俳優・姫野花春」のデビューに立ち会い、いかがでしたか?

吉田:ぶったまげました。自由でのびやかでフレッシュでありながら、でも大人顔負けの落ち着きがあって。最初にお芝居で対峙したときに、「人生何周目?」って聞きたくなるような余韻や含み、いろんな感情を間合いににじませるんですよね。すごい女優さんが出てきたなと思いました。さっきの架純ちゃんの言葉じゃないですけども、ああ、この女優さんが世間に見つかるのかっていう……。

――:直立不動で隣に立ってらっしゃいます、姫野さん(笑)。

姫野:(静かな声で)はい。もう本当に……ありがとうございます。

◆オダギリジョーのアドリブに耐え切れず……

――:西田沙都子さんについても伺いたいのですが、35歳といえば仕事もプライベートも切実な悩みが大きいお年頃。6年にも及ぶ不倫を成仏させるために書き始めるという沙都子さんの物語ですが、有村さん、演じていてどのようなことを感じられましたか?

有村:沙都子はキャリアを積むうちに、仕事ができて当たり前の年齢に差し掛かってます。新人でもない、でもベテランでもない、まだ着地していないような立ち位置の不安定さが残る中、プライベートではオダギリジョーさん演じる印刷会社の営業の方と6年にわたる不倫をしている。私生活まで不安定なのかという、彼女の持つ人間の不安定さのようなものを愛嬌ある感じに演じられればいいなと思いながら日々撮影していました。不倫に限らず、自分の中で胸を張って言えないことを小説として書き記してみようと思える、一つの恥ずかしさをさらけ出そうと思える、そのことが私は「沙都子さん、すごい」と思いました。

――:予告にも登場するのでお話ししてしまいますが、オダギリさん演じる村本の妻が突然家にやってきて、沙都子がお腹を刺されてしまうというシーンがあるんです。こうお話しすると結構ドロドロとした場面かと思いきや、事前のマスコミ試写でも笑いが起きるほどのコミカルさもあり……。有村さん、このような役柄は演じられないですよね?

有村:そうですね(笑)。どこまでリアルに表現するのがいいのか悩みました。台本に「痛ーーい!」って書いてあったんですよ。でももし本当に刺されてしまったら、「痛い」って言葉にできるのかな、とか。言葉にならない言葉で「わーっ」みたいに表現したほうがいいのかなとかいろいろ考えたのですが、監督はきっと意味があって書いてらっしゃると思ったので、もうそのまま「痛ーーい!」ってドライ(リハーサル)でやってみたらそのまま採用していただけたので、あとは思うがまま表現してみました。

 この場面のオダギリさんがアドリブ連発ですんごく可笑しくって面白くって、私が倒れた後も背後でパニックになっているのがもう可笑しくて……。どうしたって口角が上がってしまうのを髪の毛で隠しながら、「もう映さないでくれ」と思いながら撮影していました。

――:笑いをこらえられながらだったんですね(笑)。そんな中、沙都子の前に現れるのが青木柚さん演じる新入社員の嶋くんです。沙都子と同じく韓国カルチャーが大好きという役柄で、仕事をしながら二人の距離が縮まっていく様子が大変微笑ましかったです。青木さん、沖田(修一監督)作品は久々ですよね?

青木柚(以下、青木):ドラマに出させていただいたことはあったのですが(『0.5の男』)、映画は初めて。自分の中で沖田作品は特別な一方、監督の現場はいわゆる“お仕事”という感じじゃなくて、何ていうんだろう……沖田さんが現場で一番楽しそうにニコニコされているのを見ながら、「あ、大丈夫なんだな」みたいにこちらも肩の力が抜けるような、物語に近くなれるような感覚があるので、すごく楽しかったです。

――:しかも、これは情報解禁前なのでまだ言えないのですが……青木さんは今回、撮影の中であるとっておきの体験をされていますよね。これは初めての挑戦じゃないですか?

青木:そうですね。台本を読んだ時に「どういうこと?」と思いましたけど、もう二度とできない役柄で貴重な経験をさせていただきました。

――:有村さん、いかがでしたか?

有村:いやぁ、これはとっておきですよね。噂を耳にしたのですが、青木さんがこのために“あること”をずっと練習されていたとか……。もう本当に、“その方”に見えました。

青木:マジですか。

有村:素晴らしかったです。

青木:嶋くんよりだいぶ時間をかけて取り組みました。本編よりも“あっち”が本編というか……(笑)。

◆筒井くんの独特さに磨きがかかっていた

――:飯島里子さんを演じた石田さんにも伺いたいのですが、この役柄はいかがでしたでしょうか?

石田ひかり(以下、石田):はい。えーと、私も沖田監督の大ファンで、その監督が紡ぎ出す世界の一員になれたことが本当に嬉しくて。監督からは、「55歳里子は『夢の続き』です」というすごい素敵なヒントをいただきました。彼女は学生結婚をしていて、3人の男の子を育て上げた後、昔抱いていた小説家の夢をふと思い出し、書き始めるんですよね。そうそう、花春ちゃんと一緒にネブライザーをしたおかげでね(笑)。

 私自身、ちょうど娘たちにお弁当を16年間作ってきて、それがちょうど終わったぐらいのタイミングで。もう監督は私にあてがきをしてくださったんじゃないかと思うぐらい、ものすごく自分と重なるところが多くて、そして目の前にはこの人(隣の筒井道隆を指す)がいますから、もうなんていうか、居心地がすごく良くて、まさに今の自分が感じている、子育てが終わって、これからもう1回自分の人生を生きようってことを考えながら、筒井くんの顔を見ながら演じました。

――:そうなんですよね。この石田さん、筒井さんの並びを見るとあの伝説のドラマを思い出す方がたくさんいらっしゃると思うのですが、実は33年ぶりのご共演なんですね。しかも学生結婚した夫婦の役ということで、筒井さんはこの再共演をお聞きになった時はいかがでしたか?

筒井道隆(以下、筒井):(淡々と)いや、嬉しかったです。はい。

石田:あ、はい。ありがとうございます。

――:33年ぶりと思えないぐらい、すごく自然な空気がお二人に漂ってますよね(笑)。

筒井:そうですね。なんか似てると思うんですよね。だから、僕もあまり長い月日が経ったとかは関係ないですね。だからそういう空気感になっていたんですかね。

――:石田さんは久しぶりに一緒にお芝居をされて、どう感じられましたか?

石田:筒井くんって本当に独特なお芝居のアプローチをされる方で、昔からそうだったんですけれども、より磨きがかかっていた。

筒井:ありがとうございます。

石田:「筒井道隆」になっていましたね。

筒井:普通こんな感じですよね?

石田:(大きくかぶりを振って)いやいやいやいやいや、ほんとに独特だから。

筒井:すごく普通にしてる。

石田:いやいやいやいや、ほんとそんな人、あんまり見たことないし。

筒井:あ、そうなんだ。

石田:うん。いやぁ、みっちゃんだなあと思って。最後に筒井さんが私にお弁当を渡してくれるシーンがあるのですが、エプロンして台所でお弁当を詰めて玄関で「いってらっしゃい」って私に渡してくれるところまでものすごく丁寧に、何度も復習してリハーサルして……って自主練をされていました。

筒井:大事ですよね。

石田:ええ、大事ですよ。大事ですけれど、普通は、ま、言うても、言うても台所から玄関に来るぐらいからやるんですよ。でも彼はお弁当を作るところからずーっとなんかやってて。何やってんのって。

筒井:これを作って渡すんだよって。

石田:そうそうそう。そうなんだけど、言うても普通は、ね、玄関から振り返るとこぐらいからじゃないですか。それをひたすらずーっとこうやって刻んだり、炒めたりとかしてて。「いや、みっちゃん何やってんの」って言ったら、「え、作ってるんですよ」って。いやぁ、もうその姿見たときに、「うわー、ますます磨きかかってる、筒井道隆」と思いましたね。

筒井:(少し慌てて)いや、でもほら、あれですよね。誰かに作るっていうのは、そこにいくまでが楽しいじゃないですか。

石田:そう……そうですかね?

筒井:すいません。

石田:いえいえいえ。はい。

――:そろそろお時間が来てしまいました。最後に有村さんにメッセージをいただきたいと思います。

有村:この作品には、人生のおかしみみたいなものが味わい深く描かれていると思います。みなさんが自分のこれまで生きてこられた道を振り返った時に、あの失敗やものすごい後悔、思い出したくないと思うような出来事も実はくすっと笑えて、振り返った時には自分のことが愛おしく思えるようになるような、そんな力をくれる一作だと思います。みなさんの心の一本となるよう、祈っておりますので、ぜひたくさんの方々に観ていただけたらとっても幸せに思います。本日は、本当にありがとうございました。

――:ありがとうございます。『さとこはいつも』キャストのみなさんでした。大きな拍手でお見送りをお願いいたします。

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