インタビューほか

武士道女子高生の最後の夏

「本の話」編集部

『武士道エイティーン』 (誉田哲也 著)

『武士道エイティーン』 (誉田哲也 著)

──最後の美緒ですが、インターハイまでの稽古の流れの中で、上段の構えではない相手に、剣先(けんせん)を相手の左上に向け、刃を自分から見て左斜め下に向ける平正眼(ひらせいがん)の構え方をすることで、香織と対立します。この理由は美緒の章で明らかになりますが、この構えにした理由はなんでしょうか。

誉田  中段の相手に平正眼で構えるというのは、面が空いてしまうのであまり有効ではありません。ただ、普通に中段に構える中でも左目につけるという構え方はありますし、竹刀を握るときに二つの拳があれだけ離れているわけですから、竹刀を本当に真っ直ぐにするというのは、実はそんなに自然なかたちではなくて、開いたほうがむしろ楽だったりもするんです。これが美緒なりの平正眼になりました。ただ『武士道』シリーズを書く中で、最初から必殺技は作らないようにしようと思っていました。香織に関してもその時々で重点を置く技、試合の軸にしていく技は違いますが、それはごくありきたりの誰でも使っている技にしようと。『セブンティーン』からでてきた黒岩伶那(くろいわれな)に関しては、彼女自身が剣道そのものを改革したいと考える性格のため、レナの思想と現行のルールのぎりぎりのところで、今回はレナにだけオリジナルの技をあみ出させました。そうなると、実はレナと美緒は似ているのだと分かってくる。彼女たちの目的というか意識は全く逆なんですが、レナはオリジナルになるために色々な模索をし、美緒は常に何かのコピーをすることで技術を会得する。その上あっちこちに興味が向くため、剣道以外のスポーツからもコピーして持ち込んでしまう。結果的にレナに近いようなこともしてしまうんです。そういう中で、コピーを脱却するため平正眼に目をつけるというのは決して突飛なことではないんです。

──なぜ必殺技を作らないようにしようとされたのですか。

誉田  必殺技に限らず、一般に行われている剣道に近い物語にしたかったんです。例えば、主審がどちらの手に赤旗を持っているかとか一本の決まり方であったりとか。『シックスティーン』から『セブンティーン』のときに、鍔迫(つばぜ)り合(あ)いに関する高校の剣道ルールが変わったんですが、これ以降に読まれる方は現行ルールに慣れているわけですから、作品もそれに倣(なら)おう、とか。できるだけ近い世界観にしておきたいと。こんなのありえないよ、と剣道をやっている方に言われるよりは、わかるわかると読んでもらえる物語にしたかったんです。また、突飛なスーパースポーツヒーローみたいにしてしまうと、剣道をばかにしているようにも読めるので、できるだけ現実の剣道に即して書こうというのは最初からのスタンスですね。

武士道エイティーン誉田哲也

定価:本体690円+税発売日:2012年02月10日