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楷書といわれた桂文楽の話芸

楷書といわれた桂文楽の話芸

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 八代目桂文楽(本名並河益義)は、明治二十五年(一八九二年)生まれ。落語協会会長を務め、昭和を代表する名人のひとりだった。

 同時代に人気を博した五代目古今亭志ん生の破天荒な芸風とは好対照に、練りに練ったネタを厳選して高座にかけた。また、料亭に呼ばれて政治家や官僚、財界人、文化人を相手にお座敷をつとめるときも、他の落語家とはちがって、踊りや唄など披露せず、落語一筋でとおしたという。

〈楷書といわれた桂文楽の藝は、一点一画をおろそかにしない、精巧無比な機械にまでたとえられた。そんな名人最後の高座が絶句のため中断してしまった事実に、藝というもののおそろしさと、技術のむなしさを見ないわけにはいかない。一九七一年八月三十一日、国立劇場小劇場の落語研究会で、演目は『大仏餅』だった。

「申しわけありません。もう一度勉強しなおしてまいります」

 の言葉を残して高座を去っていらい、その年十二月十二日に一期を終えるまで、ひと言の落語も口にしなかった〉(「矢野誠一の昭和の藝人ちょっといい話」「本の話」十月号より)

 このような日にそなえて、失敗した時の詫びの言葉すら稽古していたという逸話が残っている。

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