――Q1.初めての週刊誌連載で、書く時に意識したところはありますか?
道尾 週刊誌の1回分って、エンターテインメント小説の起伏のリズムとして最適な長さなんですよ。毎週、何かが起きて、感情のどこかを揺さぶられる。次は一体何が起きるのか……。雑誌を開いて小説を読む10分間が、1週間の中での楽しみな時間になるように、来週の10分間を楽しみに待ってもらえるように、と思って書いています。
――Q2.道尾さんは週刊誌は読みますか?
道尾 5誌を定期購読しています。ネットの情報は偏っているし、新聞より身近な情報を得られるところが好きです。週刊誌に書いてある記事は、自分の生活に直結していることが多いように思います。世界情勢とかだけじゃなく、おいしいお店とかも知りたいですし。書けないこと、さわれないことのタブーが狭いのも週刊誌の面白いところですよね。
――Q3.今回の主人公はどんな人ですか?
道尾 僕にとって初めての女性主人公で、夏都さんといいます。今までは、男性である自分が女性を書いても、女性作家には敵わないんじゃないかという気持ちがありました。でも、作家を10年続けて、自分にしか書けない女性主人公もいると思えるようになったんです。夏都さんは、人の弱さを知っている人だけれど、敏感すぎないのがいいところ。周囲の細々としたことに気がつきすぎると、強くいられない場合もありますよね。いろんなことに一生懸命だけど、「献身」ではなくてちゃんと自分の人生を優先できる。その辺のバランスが生身の人間っぽくて僕は好きです。
――Q4.移動デリというアイデアはどこから?
道尾 夏都さんの仕事は何だろう、と考えた時に、料理の仕事には女性主人公ならではの気配りや目線がでやすいのではないかと思いました。さらに移動デリには自分で車を運転して切り盛りするかっこよさもあって、彼女にぴったり。車1台の小さな店とはいえ開業して苦労もあるし、他にも人生のいろんなことと格闘している夏都さんを応援してもらえると嬉しいです。
――Q5.『staph スタフ』というタイトルの意味は?
道尾 謎のタイトルの意味は、最後まで読んでもらうと「そういうことか!」と解るようになっています。予想もつかないラストまで一気に連れて行きたいと思いますので、「staph」の意味が解る時まで楽しみに待っていてください。