書評

名作がいっぱい
文春文庫の海外ミステリを振り返る

文: 池上 冬樹 (文芸評論家)

『真夜中の相棒 新装版』 (テリー・ホワイト 著 小菅正夫 訳)

 出版洪水と文庫戦争のあおりでどこも品切れ・絶版のスピードが早まり、名作たちが店頭から消えている。文春文庫も例外ではなく、名作の復刊が待たれていたが、嬉しいことに、4月にテリー・ホワイト『真夜中の相棒』、6月にジェイムズ・エルロイ『ホワイト・ジャズ』が復刊される。これは「文春文庫創刊40周年記念 海外ミステリ・マスターズ」の一環である。 実は、復刊となる『真夜中の相棒』の解説を担当することになり、30年ぶりに再読したのだけれど、昔読んだときよりも感動が深くて(いい小説です)、様々なことを考えてしまった。

 ホワイト作品に関しては解説を参照してもらうとして、あらためて文春文庫の海外ミステリを振り返るとそれぞれのジャンルの活性化に寄与している。トム・クランシー『レッド・オクトーバーを追え』などのハイテク軍事スリラー、スコット・トゥロー『推定無罪』などのリーガル・スリラー、スティーヴン・キング『IT』などのモダンホラー、最近ではジェフリー・ディーヴァー『ボーン・コレクター』などのツイスト満載のどんでん返しサスペンスが思い出されるだろう。

 あるいは、犯罪小説の一時代を築いたエルモア・レナード(『グリッツ』)、華麗な物語の万華鏡のロバート・ゴダード(『リオノーラの肖像』)、記憶をめぐる驚きのサスペンスのトマス・H・クック(『緋色の記憶』)などの作家名をあげる人も多いだろう。

 とはいえ、文春の海外ミステリの場合、早川や東京創元社などの専門出版社とは違い、数多く版権を取得できるわけではないのでおのずと厳選となるのだが、実にいい作家を拾い上げている。いまあげた作家のほかにも、『真夜中の相棒』のテリー・ホワイト、裁判小説の名作『誓約』のネルソン・デミル、いまやミステリのみならず現代文学の巨匠ともいっていい『ホワイト・ジャズ』のジェイムズ・エルロイ、最近では変態趣味と本格ミステリとサイコスリラーが融合した『百番目の男』のジャック・カーリイなどもいい。

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真夜中の相棒 新装版
テリー・ホワイト・著 小菅正夫・訳

定価:790円+税 発売日:2014年04月10日

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