平成二十年十二月三日、大阪府の橋下徹知事と教育委員会は「児童生徒がケータイを公立小中学校へ持ち込むことを原則禁止する」決定をしました。しかしこれに対するマスコミの取り上げ方には何か考えさせられるものがありました。単にこのことを大きく取り上げるだけではなく、各界の反応を追及し続けているその様子が、です。
同年十月一日から私は大阪府の教育委員に就任したのですが、委員会では問題はケータイだけにとどまるものではなく、テレビやゲーム機、ネットへの依存と子供世界への支配が進んでいること、他方家庭生活の空洞化と子供たちの深夜型の生活の進行など、社会全体の生活の急激な変貌をどう食い止めるべきか、積極的な防御策を講じねばならないと論議を進めていたのでした。そこでの我々の認識は、「ケータイの学校への持ち込み禁止」などは実に末端の問題であり、今後の大きな取り組みの端緒に過ぎないこと、そこからするとマスコミの反応は余りにも浅はかではないかと感じさせられたというわけです。
『脳内汚染』の出版以来、私は岡田尊司氏に対して熱い期待と注目を注いでおりました。岡田氏はこの『脳内汚染』でゲーム・ネット依存の病理と、多発する異常な少年犯罪との因果関係を、日本で初めて科学的根拠を挙げて論証したのです。奇妙な、残虐な事件が追いかけるように連続する中で、常に私は岡田氏がこれをどう考えるかと関心を向けざるを得なかったのでした。
本書を読み終え、改めて期待にたがわぬ巨大なものがまとめられたことを感じます。岡田氏はFBIによる無差別犯罪の分析をもとにして、「アベンジャー(復讐者)型」というタイプを導き出していますが、考察は単にその分類に止まりません。
ここ二十年ほど前から従来の常識では解釈しきれない異様な事件が起こり始めました。しかもここ五~六年、余りの頻発にそれらはすでに珍しい事件ですらなくなりつつあるほどです。だれしもそれぞれの胸のうちに「何がこの社会に起こっているのか。この国はどうなるのか」という素朴な疑問が広がっているのです。
しかし子供たちの「異様な行動」は、すでにその数十年も前から始まっていました。
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