- 2013.03.11
- 書評
占いとの大きな違いは、
「ちゃんと根拠がある」。
文:西村 博之 (「ニコニコ動画」運営・管理人)
『47都道府県ランキング発表!ケンミンまるごと大調査』 (木原誠太郎+ディグラム・ラボ県民性研究会 著)
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#趣味・実用
こんにちは。にしむらひろゆきと申します。インターネットの動画サイトのニコニコ動画だったり、掲示板の2ちゃんねるだったりを作ったりしてるので、ネット業界という狭い業界では、多少は知られてるらしい僕ですが、一般的には無名な人なので、こういった本を読む人には「なんでお前が書評書いてるの?」なんて思われるかもしれませんが、僕もよくわかっていません。
さておきこの本を読む人を想像すると、3種類いると思うのですね。雑学の一環として読む人と、都道府県別の統計資料として読む人、自分のことがどう思われてるのか知りたくて読む人。
んで、「自分のことがどう思われてるのか知りたくて読む」という占いとかを好きな人が、わりかし多いんじゃないかと思うんですが、実は、この本って占いとは全然違うと思うんですよ、ってのを説明してみたいと思います。
ちなみに、僕は、血液型占いとか、全く信用してないです。そもそも、血液型の4種類で人間を分けるというのも大雑把過ぎるというのもありますが、日本がなんとなくばらけてるだけで、世界中では偏りが大きいんですよね。例えば、アメリカ合衆国、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスの白人の血液型はA型とO型で80%を超えるとか、民族によって血液型はほぼ決まってたりするので、ブラジルのインディオの血液型は、100%がO型だったりするそうです。O型はリーダーシップを取るとか、言われますけど、全員がO型のインディオはどういうこと? ってことになっちゃうわけです。
最近は、「ゆとり世代」とか、年齢だけで、人の性格を決め付けるみたいなのもあるんですよね。「ゆとり世代」の中には、怠惰で向上心の無い人も居ますけど、逆に、向上心もあって努力が出来る人達もいるわけで、一方的に決め付けるのはあんまりよくないと思うのです。
一部を見ただけで、全体を決め付けちゃうわけなので、何かを判断するときの根拠にしてしまうと、間違いを犯すことも多いから、血液型やら世代論やらの根拠の無いものを基準に考えるのは失敗の要因になったりします。
んで、県民性というのも、実は血液型に近い面があったりするんですよね。なんとなく言われてるから、みんなそうだと思い込んでるけど、実際には、根拠は無かったりみたいな。「近江商人」という言葉があるから、滋賀のビジネスマンが質素倹約かというと、そんなこともないわけです。ただ、地域ごとに文化があって、その地域ごとに自分達で思ってる像というのはあったりするんですよね。「他の地域に比べて大阪は笑いに貪欲である」みたいな。
そんなわけで、実直に大量のアンケートを取って、県民性を客観的に浮き彫りにするってのは、面白いアプローチだと思いました。そして、第三者が偏見で決めた県民性ではなく、自分達で答えた結果なので、それが不名誉な傾向であったとしても、自覚はしてるってことなんですよね。
占いは書いてあるものを読んでみると、「なんとなくそう思える」ように書いてますけど、客観的な根拠は全くないんですよね。
んで、この本も、「なんとなくそう思える」んですけど、ちゃんと根拠があるという大きな違いがあるわけです。そんなわけで、本屋さんによっては、雑学なのか、資料なのか、占い系なのか、どの本棚に置かれるのかってのが、まったく想像出来ないんですけど、占いとは違うんですよ、ってのを読んだ人はわかると思いますが、占い系だと思って敬遠してる人には説明しておいたほうがいい気がしました。
また、根拠無く、「岩手県の人って不倫が好きなんですよね?」とか聞くと、単に失礼な人でしかないんですけど、「先日、統計の本を読んでいたら、岩手県は、不倫経験者数が日本で1番多いそうなんです。どうにも納得出来ないんですが、どういった理由なんですかね?」とか、大人な聞き方をすると、数字の事実があるので、怒れないというメリットがあったりしますよね。そんなわけで、僕が面白い結果だなぁ、と思ったのは以下の項目です。
山形県の男子は、外見重視度全国1位。日本一、友達が少ないのは栃木県。金額にかかわらず貸したお金は気になる第1位は新潟女子。福井女子は、「異性に対する関心が強い」が47位だけど、「犯罪衝動に駆られることがある」は1位という映画のような人生。不倫は許さない1位は三重女子。世話になったらお返しをする1位は兵庫男子。不倫をしたことがない1位は奈良男子。思っていることを言えない1位は鳥取。大勢の人といる方が好きで、1人の人を長く愛せない徳島女子。結婚満足度が高いのは、高知。全国で47番目に好奇心が旺盛なのは、佐賀。ギャンブル好き1位なのは、熊本女子。
※この記事は、本の話2013年4月号(文藝春秋2013年4月号に収録)からの転載です。
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